縦断研究

縦断研究とは

縦断研究（longitudinal study）とは、医学、社会科学、生物学などの分野で用いられる研究手法の一つで、同一の対象（人や集団など）を一定期間にわたり繰り返し観察・調査することを指します。パネル調査、縦断調査とも呼ばれます。

縦断研究の特徴

時間的変化の追跡: 最も重要な特徴は、同じ対象を時間経過に沿って追跡することで、その変化を詳細に捉えることができる点です。これにより、ある時点でのスナップショットを捉える横断研究では困難な、変化の過程や因果関係の分析が可能になります。
観察研究と実験研究: 縦断研究は観察研究として実施されることが多いですが、無作為化比較試験として構成される場合もあります。観察研究では、自然な状態での変化を捉える一方、実験研究では、特定の介入が時間経過とともにどのように影響を与えるかを検証します。
幅広い分野での応用: 発達心理学における生涯発達の研究、社会学におけるライフイベントの研究、消費者調査や世論調査での動向分析など、幅広い分野で活用されています。医療分野では、特定の疾患の予測因子を特定するために用いられることがあります。

縦断研究のメリット

変化の正確な観察: 横断研究とは異なり、同一対象を追跡するため、世代間の文化的な違いに影響されにくく、より正確に変化を捉えることができます。
因果関係の探求: 時間経過に沿ってデータを収集するため、変化の前後関係から、より正確な因果関係を推測することができます。
短期と長期の現象の区別: 例えば、貧困のような現象を短期的なものと長期的なものに区別し、より詳細な分析を行うことが可能です。

縦断研究のデメリット

コストと時間の問題: 長期間にわたる調査が必要なため、費用と時間がかかります。特に、繰り返し調査を行う場合には、コストが増大する傾向があります。
技術的な複雑さ: データ収集の各段階で、参加者の状況変化（転居など）を把握する必要があり、技術的に複雑な面があります。
脱落者の問題: 研究の途中で参加者が脱落してしまうと、比較できるデータが減少し、研究結果の信頼性が低下する可能性があります。
研究対象の変化: 研究期間中に、予期せぬ事態や、その他の変化が起こり、研究対象そのものが変化してしまう可能性があります。
ホーソン効果: 研究参加者が、調査されていることを意識することで、行動が変化してしまう可能性があります。

縦断研究の種類

縦断研究は、調査の方向性や対象者の選び方によって、いくつかの種類に分類できます。

前向き研究（プロスペクティブ研究）： 新しいデータを収集する研究です。例えば、特定の病気を発症する可能性のある人を集めて、将来にわたって追跡調査を行います。
後ろ向き研究（レトロスペクティブ研究）： 過去の医療記録やデータベースなどの既存データを利用する研究です。
集団傾向研究： 繰り返し調査を行う研究です。調査ごとに異なるサンプルを使用しますが、集団全体の傾向を追跡することができます。
パネル研究： 同じサンプルを用いて、複数回調査を行う研究です。個人の変化を追跡することができます。
コホート研究: 特定の共通の出来事を経験した人々のグループ（コホート）を追跡する研究です。コホート研究は縦断研究の一種ですが、縦断研究が必ずしもコホート研究であるとは限りません。

まとめ

縦断研究は、時間経過に伴う変化を捉え、因果関係を分析する上で非常に有効な研究手法です。ただし、コストや時間、脱落者の問題など、いくつかの課題も存在します。研究の目的や対象に応じて、適切な研究デザインを選択することが重要です。

参考資料

ESDS Longitudinal data service
Centre for Longitudinal Studies
* National Centre for Longitudinal Data

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