横浜ヨット小型旅客船爆破事件

横浜ヨット小型旅客船爆破事件：関西国際空港建設反対運動の影

1987年10月17日午前4時頃、神奈川県横浜市鶴見区の横浜ヨット（現：ユニバーサル造船）第三船台で、建造中の小型旅客船が爆発炎上する事件が発生しました。この事件は、極左暴力集団「中核派」によるテロであると断定されています。

事件の発端：成田空港問題からの流れ

新左翼は、1970年代の成田空港建設反対運動で激しい闘争を展開しました。その経験と勢いを背景に、新たに建設工事が始まった関西国際空港に対しても反対運動を展開します。「西の三里塚」と称し、関西国際空港建設への反対運動を激化させていました。本事件は、こうした運動の高まりの中で発生したものです。

事件の概要：建造中の旅客船「おおぞら」への攻撃

爆発炎上したのは、関西国際空港株式会社（現：関西国際空港土地保有株式会社）が発注した小型旅客船でした。「おおぞら」と名付けられたこの旅客船は、工事関係者や視察者を現場まで送迎するために建造中であり、6日後の10月23日に進水予定でした。 午前4時頃発生した爆発により、船体は大きく損傷し、全焼しました。消火活動は約45分間続きました。

犯行声明と中核派の関与

事件から2日後の10月19日、中核派は豊中市役所前で犯行声明を発表しました。この声明により、神奈川県警察は中核派によるテロ事件と断定しました。 この事件は、関西国際空港建設への反対運動を象徴する出来事として、大きな社会的な衝撃を与えました。

関連事件：兵庫県西宮市での爆破事件

本事件以外にも、関西国際空港工事関連企業所有の地盤改良船が、同年8月27日に兵庫県西宮市内で爆破される事件が発生していました。これらの事件は、関西国際空港建設反対運動における過激派の活動が、各地で同時多発的に行われていたことを示しています。


事件の背景：高度経済成長期からの矛盾

高度経済成長期以降、日本社会では開発と環境問題、経済発展と市民生活の調和など、多くの矛盾が表面化していました。関西国際空港建設も、こうした社会問題と深く関与していました。反対運動は、開発による環境破壊への懸念、地元住民への影響への不安、そして社会構造への批判など、多様な要因が複雑に絡み合ったものでした。

事件の影響と現代への示唆

横浜ヨット小型旅客船爆破事件は、テロの危険性と、社会運動における暴力行為の深刻さを改めて浮き彫りにしました。 この事件は、開発計画と住民運動、そして過激派の関与など、現代社会における様々な問題を考えさせる、重要な歴史的事件です。 現在も、大規模な公共事業や開発計画においては、住民との丁寧な協議と合意形成が不可欠であり、暴力によらない平和的な解決が求められています。


参考文献

『過激派事件簿40年史』立花書房、2001年


関連項目

泉佐野市民会館事件
日本のニューレフト
中核派
* 関西国際空港

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