横浜歌謡ショー将棋倒し事故

横浜歌謡ショー将棋倒し事故

1960年（昭和35年）3月2日、横浜市で発生した群集事故は、ラジオ関東（現：アール・エフ・ラジオ日本）の開局1周年記念イベントで起こりました。人気番組『歌謡曲ゴールデン・ヒット・ショー』の公開録音が、横浜公園体育館で開催される予定でした。

イベントの概要と事故発生

体育館の定員は3,500人でしたが、主催者は「無料招待券を配っても、実際には来ない人が多いだろう」と安易に考え、定員の2倍以上となる8,000枚もの招待券を配布しました。しかし、予想に反して約6,000人もの観客が当日会場に集まりました。

体育館の正面入口と北側入口に2列ずつ入場希望者が並び、17時30分に入場が開始されました。すぐに館内は満席となり、入場を希望する人々を全て収容することが不可能な状況に。警備員は「満席のため入場できない」と説明しましたが、招待券を持つ観客は「券を持っているのだから入れろ」と騒ぎ立てました。

17時45分頃、複数の観客が列に割り込んで無理に入場しようとしたため、北側入口で将棋倒しが発生。約100人が巻き込まれ、12人が圧死、8人が重傷、その他多数の軽傷者が出ました。

救助活動と原因究明

事故発生後、横浜市内の各消防署から救急車が出動。負傷者は近隣の病院へ搬送されました。警察車両やタクシーも動員されるなど、現場は騒然となりました。

神奈川県警察本部は、事故発生後すぐに現場検証と関係者への事情聴取を開始しました。その結果、北側入口は幅3メートルの狭い入口で、観音開きのドアのうち1枚が閉鎖されていたことが判明しました。さらに、ドアの下には段差があり、そこで足を取られて転倒したことが、将棋倒しの原因になったと推定されました。

警備体制と主催者の責任

当日の警備体制は、ラジオ関東の社員10名、アルバイト学生25名、警察官19名でした。しかし、主催者は来場者数を4,000人程度と予想し、警察にその旨を伝えていたため、警察側も警備を増員しませんでした。結果として、予想を大幅に超える観客に対応できず、事故を防ぐことができませんでした。

事故の背景と影響

予想以上の観客が押し寄せた背景には、出演者の豪華さが挙げられます。落語家の林家三平、歌手の島倉千代子、青木光一、若山彰など、当時の人気芸能人が出演することになっていました。この事故で、横浜造船所の社宅に住む親子3名（母親と子供2名）を含む多数の犠牲者が出ました。

公開録音ショーは急遽中止となり、ラジオ関東は当日の番組放送を全て中止して謝罪と事故の詳細を伝えました。翌日には、社長名で新聞にお詫び広告を掲載しました。

この事故は、イベント主催者の安全管理の甘さ、群集心理の危険性を浮き彫りにしました。そして、二度とこのような悲劇を繰り返さないための教訓として、今も語り継がれています。

TBSスパークル公式YouTubeでは、事故直後の様子や犠牲者の合同葬儀などの貴重な映像が公開されています。

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