横須賀米海軍病院

横須賀米海軍病院（正式名称：United States Naval Hospital Yokosuka、通称：NAVMEDCEN Yokosuka）は、日本の神奈川県横須賀市に所在するアメリカ海軍横須賀基地内に設置された主要な医療機関です。

1950年に設立されて以来、主に同基地および近隣に居住するアメリカ海軍の軍人、軍属、およびその家族に対し、総合的な医療サービスを提供しています。その対象は単なる治療にとどまらず、予防医療や健康管理、精神的なケアなど多岐にわたります。また、日本国内に展開する他の主要な海軍施設である厚木海軍飛行場、岩国海兵隊基地、佐世保基地などにも分院や分遣隊を設け、広範囲の米海軍関係者への医療支援を行っています。

沿革

現在の病院敷地の起源は古く、明治時代にまで遡ります。1881年（明治14年）には、すでにこの地に大日本帝国海軍の病院が設立されていました。

この旧海軍病院は1923年（大正12年）の関東大震災によって大きな被害を受けましたが、その後復興が進められ、1931年（昭和6年）2月には、医療機能と同時に教育機能を兼ね備えた施設として再建を果たしました。

太平洋戦争終結後、この施設は占領軍（後の進駐軍）によって接収されることとなります。そして、朝鮮戦争の勃発という緊迫した国際情勢下の1950年（昭和25年）9月11日、旧海軍病院の施設を活用する形で、アメリカ海軍の病院として正式に設立されました。これが現在の横須賀米海軍病院の直接の始まりとなります。

設立後、病院は直ちに朝鮮戦争における傷病者の治療拠点となり、5,800名を超える負傷者や病人の手当てを行いました。続くベトナム戦争においても多くの傷病者の治療に貢献し、これらの紛争における医療支援の功績に対して、本国のアメリカ海軍から部隊表彰を受けています。

1970年代に入り、1973年（昭和48年）にはアメリカ海軍の航空母艦「ミッドウェイ」が横須賀に前方展開配備され、これに伴い海軍関係者の海外家族滞在プログラムも本格化しました。これにより基地全体が再び活気を取り戻し、居住者の増加に伴い医療需要も高まりました。中東および極東地域における国際情勢の緊迫化も背景となり、施設の拡充が求められ、1981年（昭和56年）には最新設備を備えた新しい病院棟が開業し、より高度な医療サービスの提供が可能となりました。

サービスの質の向上にも継続的に努め、1999年（平成11年）にはアメリカ海軍本部より、その優れた患者対応が特に高く評価されました。

2001年（平成13年）には、予防医療や健康増進を目的としたウェルネスセンターを開設するとともに、海外に駐留する海軍関係者の家族を対象とした、女性、乳幼児、児童に特化した専門オフィスを世界に先駆けて設置するなど、多様化する患者のニーズに応える体制を構築しました。

同年後半に発生したアメリカ同時多発テロ事件は、病院の役割にも大きな影響を与えました。世界的な緊張が高まり、作戦遂行のための準備訓練が再び活発化する中、病院は2002年（平成14年）を通じて、有事に備えた傷病者の治療体制のさらなる強化に取り組みました。同時に、基地内で生活する家族が抱える不安に寄り添い、精神的な支援や、家族全体の健康維持に向けたケアにも重点を置きました。さらに、当時のイラクでの任務に就いていた航空母艦「キティホーク」の医療部門に対して、後方支援や専門知識の提供なども行い、部隊の医療体制を支える重要な役割を果たしました。

このように、横須賀米海軍病院は、設立以来、日本の地でアメリカ海軍の作戦遂行を医療面から支え、常に変化する国際情勢や基地の状況に対応しながら、関係者とその家族の健康と福祉を守るための重要な拠点としての役割を担い続けています。

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