樫尾俊雄

樫尾俊雄：革新的な発想で世界を変えた発明家

樫尾俊雄（1925年1月1日 - 2012年5月15日）は、日本の発明家であり、カシオ計算機創業メンバー「樫尾四兄弟」の次男として知られています。彼は、世界初の小型純電気式計算機「14-A」、オートカレンダー搭載腕時計「カシオトロン」、電子楽器「カシオトーン」など、数々の画期的な製品を開発し、カシオ計算機を世界的な企業へと成長させました。

生涯を研究と開発に捧げた発明家

東京で生まれた樫尾俊雄は、幼い頃から発明に強い関心を持ち、エジソンの伝記に感銘を受けて発明家を志しました。逓信省勤務を経て、兄の樫尾忠雄が経営する樫尾製作所に参加し、その後、1957年にカシオ計算機を設立。取締役技術部長、開発本部長、会長、名誉会長を歴任し、常に開発の最前線で指揮を執りました。

革新的な製品を生み出す原動力

樫尾俊雄の発明家としてのスタイルは、「0から1を生み出す」という信念に象徴されます。彼は、既存のニーズに応えるだけでなく、まだ誰も気づいていない「普遍的な必要性」を発見し、それを解決する製品を開発することに情熱を注ぎました。その結果、世界初の技術を搭載した製品が次々と誕生し、市場に大きなインパクトを与えました。

世界初の小型純電気式計算機「14-A」

カシオ計算機の第1号製品である「14-A」は、341個のリレー素子を用いた画期的な計算機でした。当時、高価であったにもかかわらず、官公庁や企業に広く普及し、事務処理の効率化に貢献しました。テンキー方式やシングルディスプレイなど、現代の電卓のインターフェースの基礎を築いた点も特筆されます。

オートカレンダー搭載腕時計「カシオトロン」

「時間は1秒ずつの足し算である」という発想から生まれた「カシオトロン」は、世界初のオートカレンダー機能を搭載した腕時計でした。計算技術を応用して、年月日・時分秒・曜日を自動的に表示する画期的な製品であり、時計業界に大きな衝撃を与えました。

電子楽器「カシオトーン」

音楽好きでありながら楽器演奏に苦労した経験から、「誰もが簡単に演奏を楽しめる楽器」を目指して開発されたのが「カシオトーン」です。音の構造を徹底的に研究し、「子音母音システム」という独自の音源技術を開発。自然な楽器の音色を再現し、手軽に音楽を楽しめる楽器として、世界中で人気を博しました。

発明への情熱と独自の哲学

樫尾俊雄は、発明に没頭するあまり、寝食を忘れることもあったと言います。また、「記憶は思考を阻害する」という独自の哲学を持ち、他社の製品や書籍に頼らず、常にゼロから発想することを重視しました。彼の発明に対する情熱と哲学は、カシオ計算機の企業文化として受け継がれています。

社会への貢献とレガシー

樫尾俊雄は、計算機や事務機器の開発を通じて、事務処理の効率化や科学技術の発展に大きく貢献しました。また、晩年まで発明への情熱を失わず、音や情報の研究に打ち込みました。彼の功績は、藍綬褒章や米国家電協会生涯業績賞など、数々の賞によって讃えられています。彼が設立した「樫尾俊雄発明記念館」では、彼の業績や発明の精神を学ぶことができます。彼の革新的な発想と技術は、カシオ計算機を通じて、これからも社会に貢献し続けるでしょう。

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