機動救難士(きどうきゅうなんし)
機動救難士は、
海上保安庁に所属する特別な救助チームであり、主に
ヘリコプターを利用して海上で発生する急病や事故に対応します。この部隊は、航空基地に配置されており、その迅速な出動能力から「空飛ぶ
海猿」として広く知られています。また、初めは「ミニ特救隊」としての構想があったことも特徴です。
来歴
沿岸20海里(約37km)以内で発生する海難事故や人身事故は、全体の約95%を占めています。このため、
海上保安庁ではこれらの事案に優先的に対応する必要があると考えられていました。実際の救助活動においては、常に傷病者の移送が大きな課題とされており、特に重傷の患者に対しては、迅速な救助が求められます。
洋上の救助では、救難
ヘリコプターが重要な役割を果たします。
ヘリコプターを使用して要救助者を救助する際、潜水士が船上または洋上に降下し、救助活動を支援します。しかし、潜水士の中でリペリング降下などの特殊な技術を用いて救助ができるのは、特殊
救難隊の一部の隊員だけでした。そこで、リペリング降下技術を持つ専門家チームを航空基地に配置し、救助体制の強化を図ることが決定されました。これが機動救難士の発足につながりました。
編制と活動内容
機動救難士は、潜水士としての豊富な経験を持つ選ばれた隊員から構成されており、多くは特殊
救難隊の経験者です。隊員の約半数は救急救命士の資格を持ち、急な事態においても機内での処置を行うことができます。特救隊の潜水深度は60メートルとされる一方で、機動救難士は
ヘリコプターを利用して空から活動するため、潜水深度が8メートルに制限されています。
最初の配備は2002年に福岡航空基地で行われ、続いて2003年4月には函館、美保、鹿児島の各航空基地に「救護士」として設立されましたが、2004年にはこれらも機動救難士として再編成されました。現在、2019年の時点で9つの航空基地に9名ずつが配置されており、羽田特殊救難基地と連携することで、日本中の沿岸地域において
ヘリコプターでおおむね1時間以内に出動できる体制が整っています。
ただし、道東や道北地域はこの1時間の範囲外であり、特に2022年に発生した知床遊覧船の沈没事故で救助活動の遅れが指摘されたことを受け、2023年度には釧路航空基地にも機動救難士が新たに配置されることとなりました。
配置基地一覧
- - 函館航空基地(第一管区):救護士より改組
- - 釧路航空基地(第一管区):2023年4月に9名を配置
- - 仙台航空基地(第二管区):2011年10月1日配置
- - 関西空港海上保安航空基地(第五管区):2005年配置
- - 北九州航空基地(第七管区):2002年10月1日、先駆けて4名を配置
- - 美保航空基地(第八管区):救護士より改組、2008年7月には4名を追加
- - 新潟航空基地(第九管区):2010年10月1日、8名を配置
- - 鹿児島航空基地(第十管区):救護士より改組
- - 那覇航空基地(第十一管区):2009年10月、8名を配置
- - 石垣航空基地(第十一管区):2015年5月15日配置
これらの基地により、日本の沿岸地域における救助活動を精力的に行い、迅速な対応を可能にしています。