櫛

櫛（くし）についての詳細

櫛とは、髪を整えたり梳いたりするための道具であり、英語では「コーム（comb）」と呼ばれています。通常、櫛は板状の形を持ち、長辺の片方には等間隔の切り込みが施されています。これらの切り込みの間にある部分が「歯」と呼ばれ、髪を梳くために使われます。櫛の機能は、単に髪型を整えるだけでなく、古くは衛生的な目的で、ダニやシラミ、ノミなどを取り除く道具としても用いられていました。現代では入浴や洗髪の習慣が普及したため、その衛生用具としての役割は減少しています。

櫛の歴史と種類

櫛の歴史は古代にさかのぼり、古代エジプトではすでに使用されていたと考えられています。櫛はその形状によって「竪櫛（たてくし）」「横櫛（よこくし）」「両歯櫛（りょうばぐし）」に分けられ、また、歯の作りによって「結歯式（けっし）」と「刻歯式（こくし）」に分類されます。

• - 竪櫛: 歯が下に向いていると縦長になる形状。
• - 横櫛: 歯が下に向くと横長の形状。
• - 両歯櫛: 上下に両方に歯があるタイプ。

結歯式は細い竹や木を束ねて作られ、刻歯式は板状の木や動物の骨に歯の刻みを入れたものです。日本では縄文時代から櫛が使用されており、古墳時代には結歯式、奈良時代には横櫛が普及しました。江戸時代には髪を結う習慣が広まり、櫛の種類も多様化しました。

現代の櫛とその素材

現在、櫛はさまざまな素材で作られており、獣の骨や木材、竹、鼈甲、金属、合成樹脂などが使用されています。特に日本では、ツゲを使った櫛が高級品とされています。櫛の形状や美しさも洗練され、理髪店などで利用者ごとに使い分けられる安価な量産品も登場しています。

日本の和櫛

日本文化においては、江戸時代中期以降に多様な髪型が生まれ、それに伴い櫛や簪（かんざし）、笄（こうがい）といった道具が進化しました。櫛の用途は、大きさや形状によって細分化され、梳かし櫛や押櫛、結櫛など、さまざまな種類が存在します。

• - 梳かし櫛: 頭皮の汚れを取るために使用。
• - 押櫛: 装飾用としても使用される櫛。
• - 結櫛: 髪を結うための特別な櫛。

櫛にまつわる文化

語源の面から見ると、日本語の「櫛」は「霊妙なこと」を意味する「奇（くすし）」や「聖（くしび）」との関連性があり、呪力を持つとされることがあります。特に、櫛を拾うことは「苦死」を連想させるため、良くないとされています。そのため、一般的に道に落ちた櫛を拾う際は、足で踏んでから拾うことが良しとされています。また、櫛を贈る際には、「かんざし」と呼ぶように工夫されています。

さらに、櫛は日本の伝説や神話にも登場し、例えば『古事記』では伊邪那岐が櫛を使って追っ手から逃れるエピソードが描かれています。櫛は単なる道具を超えて、日本の文化や美意識、精神性に深く根ざした存在として位置づけられています。

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