欠落

欠落とは

欠落（かけおち、または闕落）という概念は、戦乱や重税、犯罪といった理由から、領民が無断で自らの居住地を離れ行方不明になることを指します。江戸時代では、特に这を「走り」とも呼び、武士の場合には出奔や立退と呼び分けられることもありましたが、基本的には同様の行為を指していました。

歴史的背景

古代には居住地からの逃亡を「逃亡」と表現され、中世においても年貢や公事を納められないことを理由に、同様の行為が続きました。欠落という言葉自体は戦国時代に登場し、領主間での欠落者返還の協定や、戦国大名による仲介が行われるなど、特定の対応策が講じられていました。

江戸時代に入ると、幕藩体制を維持するためには貢租の納付義務を貫徹し、領民を固定化させることが重要とされました。それに反する欠落は重大な犯罪として捉えられ、浪人や被支配の農民、商人などの欠落は厳しく取り締まられていました。しかし、実際には、江戸時代を通じて日本各地でこの欠落は頻繁に発生していたのです。

欠落の手続き

欠落が認識された場合、欠落者の属する家の当主、親族、村役人などは、欠落者の帰還を3日間待った後、30日以内に奉行所や代官所に「欠落届」を提出しなければなりません。この手続きは、欠落が本人の犯罪であるだけでなく、共同体全体の責任として捉えられていたからです。このため、欠落者の発見が義務化されていたのです。

捜索は「日限尋」と呼ばれる期限が設けられ、最大で180日行われ、その後も無期限の「永尋」が行われました。この間に欠落者が自首する場合でも、捜索を行わなかった親族や五人組は処罰される危険が伴いました。

また、「永尋」に入った時点での扱いとして、欠落者は家督や財産において死亡扱いとなり、相続手続きが開始されます。この場合、家族関係の解消も認められるため、欠落者が後に影響を受けることもありませんでした。

社会的影響と政策

江戸幕府は他領に逃げ込んだ農民を本来の住地に返還しようとしましたが、実際の対応は領主によって異なりました。領主は欠落者を厳しく取り締まる一方で、他領からの欠落者に対して好意的な姿勢を見せることが多かったのです。特に、城下町の拡張や新田開発が必要な時期には、欠落者を受け入れ、地域の人口を増加させようとしました。このため「走らせ損、取り得」という言葉も生まれたのです。

江戸時代中期以後、貢租収入が減少することを懸念し、農民の欠落に対する復帰政策も取られるようになりました。農民の場合、欠落による財産の没収は減少し、相続人が存在すれば農業に必要な土地や家は維持されることが許可されたのです。これにより、欠落者が送還された場合には、農具や耕地も与えられることがありました。

結論

欠落という行為は、単に個人の行動に留まらず、当時の社会制度や地域社会全体に影響を及ぼす複雑な現象でした。そのため、江戸幕府や地域の権力者たちは欠落の発生に敏感に反応し、さまざまな対策を講じていたのです。

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