村役人

村役人とは

村役人とは、江戸時代（近世）の日本の村落（近世村）において、村政を担った人々のことです。東日本では名主（なぬし）・組頭（くみがしら）・百姓代（ひゃくしょうだい）、西日本では庄屋（しょうや）・年寄（としより）・百姓代（組頭）が、村方三役として知られていますが、これらの呼称は時代や地域によって異なりました。また、東北地方では名主や庄屋を肝煎（きもいり）と呼ぶこともありました。村方三役の他に、大庄屋（おおじょうや）や割元（わりもと）、十村（とむら）といった役職が置かれる場合もありました。

歴史

戦国時代から豊臣秀吉による天下統一が進む中で、兵農分離が行われ、それまで在地領主であった武士が城下町に集住するようになりました。これにより、農民は村単位で年貢や諸役を納める村請制によって支配されることになりました。村役人は、領主制支配の末端に位置付けられる一方で、村落共同体の代表者として、資源管理や工事などの共同作業を主導する役割も担っていました。

幕府の直轄地である幕領では郡代や代官、私領では旗本や御家人、大名領では代官や藩士などが領主として存在し、村ごとに年貢や諸役の納入が行われました。相給（あいきゅう）村落では、一人の領主に対して一人の名主が必要となるため、村内に複数の名主が存在する場合もありました。

江戸時代初期には、名主や庄屋は土豪や有力な農民の子孫が世襲していましたが、小作農民による村方騒動や、新田開発による分村などによって、有力な農民による輪番制に移行していきました。名主や庄屋への就任には領主の許可が必要でしたが、それ以下の役職については届け出るだけで済む場合が多かったようです。地域や時代によっては、村役人の選定が入札や役株売買によって行われることもありました。

明治5年（1872年）には、村役人の名称は戸長（こちょう）や副戸長（ふくこちょう）に変更され、村役人制度は廃止されました。

職務

名主や組頭は、村政の担当者として、法令の伝達や年貢の割り付けを行い、領主への年貢納入に責任を負いました。百姓代は監査役として、村役人の不正を監視し、村方騒動などをきっかけにその役割が確立していきました。これらの村役人には、役料が給付されることが多くありました。

地方三帳（じかたさんちょう）などの文書は、村役人の役宅に置かれ、交代の際には引き継がれるのが通例でした。これらの文書は地方文書と呼ばれ、現在でも保存されているものが多くあります。

また、大庄屋、割元、十村と呼ばれる役職は、十から数十の村々（組合村とされることもある）の広域行政を担っていました。幕領では正徳3年（1713年）にこれらの役職が廃止され、惣代（そうだい）が置かれることになりました。

まとめ

村役人は、江戸時代の村落において、行政、徴税、共同作業の指導など、多岐にわたる役割を担っていました。彼らは、領主の支配下でありながら、村の自治を担う存在でもあったと言えるでしょう。村役人の制度は、時代とともに変化し、明治時代に廃止されるまで、日本の村社会の運営において重要な役割を果たしました。

参考文献

児玉幸多「名主・庄屋」『国史大辞典』吉川弘文館
水本邦彦「村役人」『国史大辞典』吉川弘文館

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