次亜塩素酸カルシウム

次亜塩素酸カルシウム：その性質、反応、歴史

次亜塩素酸カルシウム (化学式: Ca(ClO)₂またはCaCl(ClO)・H₂O) は、漂白剤や消毒剤として広く用いられる白色の粉末状物質です。その原料に水酸化カルシウムを含むものは、一般的にさらし粉と呼ばれています。さらし粉は、消石灰（水酸化カルシウム）に塩素ガスを吸収させることで製造されます。ドイツ語ではクロールカルキ(Chlorkalk)と呼ばれ、略してカルキ、あるいは塩化石灰と呼ばれることもあります。

次亜塩素酸カルシウムの含有量は、塩素の吸収量によって変化します。特に、次亜塩素酸カルシウム含有量の高い製品(約70%)は高度さらし粉と呼ばれ、水酸化カルシウムの含有量はごくわずかです。高度さらし粉は吸湿性が低く、長期保存に適しています。

水に可溶性で、強い酸化力を持つため、漂白や消毒に効果を発揮します。固形化したものは、プールやその関連施設の消毒にも広く用いられています。

化学反応

次亜塩素酸カルシウムは、様々な物質と反応します。例えば、塩酸と反応すると、塩素ガスが発生します。これは、塩素の製造方法としても用いられています。

反応式は以下の通りです。

`4HCl + Ca(ClO)2 → CaCl2 + 2Cl2 + 2H2O`

また、水やエタノールとも反応し、水酸化カルシウム、クロロホルム、酸素を生成します。他のアルコール類でも同様の反応が起こることが知られています。

`H2O + C2H5OH + 3Ca(ClO)2 → 3Ca(OH)2 + 2CHCl3 + O2`

さらに、アニリンと反応させると赤紫色に呈色し、硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液で酸化するとアニリンブラックを生成します。

180℃に加熱すると分解し、酸素を放出して酸化剤として作用しますが、それ自体は燃焼しません。

`Ca(ClO)2 →[180℃] CaCl2 + O2`

歴史

塩素による漂白作用は、1785年にクロード・ルイ・ベルトレーによって発見されました。しかし、塩素そのものは臭いが強く、毒性も高いため、漂白剤としての利用は困難でした。その後、ベルトレーは塩素を石灰水に溶かすことで、安全性を確保しつつ漂白効果を維持できることを発見し、1786年にはジェームズ・ワットにその情報を伝えました。ワットから情報を聞いたチャールズ・テナントは、1799年に固体で保存可能なさらし粉の製造に成功しました。これは、塩素系漂白剤の実用化に大きな貢献を果たしました。

関連物質

次亜塩素酸
次亜塩素酸ナトリウム
消毒薬
漂白剤

もう一度検索