欧州対外行動局

欧州対外行動局（EEAS）：EU外交の中枢機関

欧州対外行動局（EEAS）は、2009年発効のリスボン条約を受けて設立された、欧州連合（EU）の外交政策を担う機関です。2010年12月1日に業務を開始し、EUの共通外交・安全保障政策（CFSP）を実行しています。 EEASは、リスボン条約で新設された外務・安全保障政策上級代表（HR/VP）の下に位置し、上級代表の活動を補佐する役割を担っています。

設立の背景と経緯

EEASの設立構想は、当初は発効が断念された欧州憲法条約に含まれていました。EUの対外関係部局の一本化は、外交政策の効率化と上級代表職の強化に不可欠とされていました。 当時、複数の部局がEUの外交を担っていた状況について、欧州改革センター創設者チャールズ・グラント氏は「オーケストラのいない指揮者」と表現しました。憲法条約の否決後、この構想はリスボン条約に引き継がれ、EEASの設立に至りました。

リスボン条約第27条では、EEASの上級代表への補佐、加盟国外交当局との連携、理事会事務局や欧州委員会関連部局からの職員配置など、EEASの任務が明確に規定されています。 上級代表には、政策提案や実行の権限がありますが、政策の制定権限は外務理事会（上級代表が議長を務める）が有しています。

組織と機能

EEASは、外交、安全保障、防衛政策を運営し、統合情勢センター（情報機関）を監督しています。しかし、政策決定は加盟国が行い、政策実施には欧州委員会も関与します。 EEASは、各国・地域機関への専門担当官、民主主義・人権・防衛専門部局などを設置し、幅広い外交活動を行っています。

組織は6つの総局を中心に構成されており、それぞれが会計・人事、気候変動・人権問題、多国間組織との連携、近隣諸国との関係、先進国との関係、途上国との関係など、重要な分野を担当しています。さらに、安全保障、戦略政策立案、法務、広報、内部監査などの部局も存在します。

人事と運営

EEAS職員は約1100名で、欧州委員会、理事会、加盟国外交当局からの出向職員で構成されます。上級代表は専属職員を直接任命します。 職員の国籍配分は定められておらず、最大40％が加盟国からの出向職員です。 EU規模の外交官養成機関の創設が求められる中、職員は共通の外交スキルを育成することを目的として、均一な権限と待遇を受けています。

EEASの日常業務は事務総長が統括し、上級代表は往復外交や特別代表の監督に当たります。事務総長の下には事務次長2名と総局長6名が配置され、それぞれの役割を担っています。 欧州議会は、事務総長の権限と責任のバランスに懸念を示し、予算総局長の人選への関与を求めました。

代表部と予算

従来の欧州委員会代表部は、EU大使館としてEEASの下に置かれ、「EU代表部」と改称されました。代表部は、欧州議会議員への支援や、欧州議会からの質問への対応を行っています。 EEASの予算は上級代表が提案し、欧州議会が承認します。

諜報活動

EEASは、統合情勢センターを中心に諜報活動を行っています。統合情勢センターは、加盟各国からの情報分析官によって構成され、24時間体制で活動し、様々な情報源から収集した情報を分析・提供しています。 ただし、加盟国情報機関と同等の機密活動は行いません。

欧州委員会との関係

EEASと欧州委員会は、特に開発援助分野で協力関係を築いています。 当初、EEASがより多くの権限を担う構想もありましたが、最終的には欧州委員会との妥協が成立し、開発分野における権限分担が決められました。

所在地

EEASの本部はブリュッセルのシューマン広場にある「トリヤングル」ビルに置かれています。 当初は他の候補地も検討されましたが、コストやセキュリティ、独立性の観点からトリヤングルビルが選ばれました。

欧州議会の監督

欧州議会はEEASの予算承認権を持ち、在外公館の予算にも関与します。また、重要国への大使任命にも影響力を持つなど、EEASに対する監督を強化しています。

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