共通外交・安全保障政策

共通外交・安全保障政策（CFSP）の概要

共通外交・安全保障政策（CFSP）は、欧州連合（EU）の加盟国間で合意された、安全保障と防衛に関する外交政策です。貿易政策や開発援助とは異なり、CFSPは安全保障と防衛に特化した政策分野です。CFSPに関する決定は原則として加盟国全員の同意を必要としますが、特定の案件においては条件付き多数決で決定することも可能です。

CFSPは、EU外務・安全保障政策上級代表によって推進されています。北大西洋条約機構（NATO）がヨーロッパの地域防衛を担う一方、EUは1999年以降、平和維持や治安維持活動を実施しています。かつてはEUの3本柱構造の1つでしたが、2009年のリスボン条約により、この構造は廃止されました。

CFSPの歴史

CFSPのルーツは、1970年に導入された欧州政治協力（EPC）に遡ります。EPCは加盟国間の非公式協議で、外交政策における共通認識の形成を目指していました。しかし、ユーゴスラビア紛争などの出来事を経て、より強力なEU外交政策の必要性が認識され、1993年のEU条約でCFSPが正式に導入されました。

アムステルダム条約では、CFSP上級代表のポストが創設され、EU外交政策の調整と代表を担うことになりました。2009年のリスボン条約により、3本柱構造は廃止されましたが、CFSP上級代表は外務・安全保障政策上級代表に統合され、EUの外交政策における役割はさらに強化されました。

CFSPの目的

CFSPの目的は、EUの価値観、基本的利益、安全、自立、統合を守ること、民主主義、法の支配、人権を強化すること、国際平和と安全保障を促進すること、貧困撲滅と持続可能な開発を推進することなど多岐に渡ります。国際貿易の自由化や環境保護、災害支援などもCFSPの活動範囲に含まれます。

CFSPの要素

CFSPは、欧州理事会が策定する原則や指針に基づいて、欧州連合理事会が「共同行動」や「共通の立場」を決定します。共同行動はEUによる具体的な活動内容を定め、共通の立場はEUが特定の案件で取るべき姿勢を明確に示します。

CFSPの上級代表

上級代表は、EU理事会議長とともに、合意された外交政策案件においてEUを代表します。加盟国間の意見の不一致を調整する重要な役割を担います。上級代表はまた、EU特別代表の任務を調整し、欧州対外行動局を統括します。

CFSPの組織

CFSPには、外務理事会、政治・安全保障委員会、欧州防衛機関、欧州連合安全保障研究所、欧州連合衛星センターなど複数の機関が関与しています。これらの機関は、政策立案、実施、監視などの役割を担っています。

CFSPと防衛政策

CFSPは、共通安全保障防衛政策（CSDP）とも密接に関連しています。EUは独自の軍事力を保有していますが、加盟国の多くはNATOに加盟しており、NATOがヨーロッパの防衛の中核を担っています。1999年のコソボ紛争以降、EUの独立した軍事行動能力の強化が重視されるようになり、EU戦闘群などの取り組みが推進されました。

政治・安全保障委員会

政治・安全保障委員会は、CFSPとCSDPの政策実施を監視し、欧州連合理事会に助言する重要な役割を担っています。

CFSP以外のEU外交

EUはCFSP以外にも、欧州委員会を通じて国際機関で活動しています。EUの拡大は、加盟国に政治・経済改革を促し、東欧諸国の安定化に貢献しています。EUの影響力は、ソフトパワーとしても認識されています。

CFSPと人道支援

EUは、欧州委員会人道援助局を通じて、世界各国への大規模な人道支援を実施しています。その支援規模は世界最大級です。しかし、支援の効率性や透明性については、批判もあります。

CFSPと中立性

一部のEU加盟国は中立性を維持していますが、EU加盟国として、CFSPなどの共通政策に積極的に参加しています。アイルランドの中立性については、リスボン条約において改めて確認されました。

参考文献

本記事の作成にあたり、以下の文献を参照しました。（文献リストは省略）

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