欧州経済共同体

欧州経済共同体（EEC）についての詳細

概要

欧州経済共同体（European Economic Community、略称：EEC）は、1958年にベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、オランダの6カ国によって設立され、主に経済統合を目的とした国際機関です。設立当初は、共同体の発展を図り、加盟国間の貿易や経済的な結びつきを強化することを目指していました。また、後に他の国々も加入し、その役割が進化する中で、EECは1967年に欧州石炭鉄鋼共同体（ECSC）および欧州原子力共同体（Euratom）と統合し、欧州諸共同体（EC）と呼ばれる体制に変わりました。

設立の背景

EECの設立に至るまでの過程には、1951年の欧州石炭鉄鋼共同体設立条約の調印があり、これを契機に長期的な経済統合を目指す草の根的な運動が展開されました。特に、加盟国間の経済的な統合が進むことで、未来の戦争を防ぐための基盤を築くことが強く意識されていました。1956年にメッシーナ会議が開催され、ポール＝アンリ・スパークの指導のもとで関税同盟に関する提案がされ、これが後のEEC設立につながりました。そして、1957年3月25日にローマ条約が調印され、EECが正式に設立されることとなりました。

草創期と進展

EECが設立された当初、加盟国は主権を巡っての不安があったため、統合の進展には慎重でしたが、特に1962年に共通農業政策を導入したことが初めての重要な成果となりました。この共通農業政策は、域内の農産品の価格設定などを通じて市場の調和を図るものでした。1968年には、一部の製品に関して関税の撤廃が実施され、さらなる経済統合のステップが踏まれることになりました。

しかし、この時期にはフランスが強い拒絶を示したことがあり、フランスは共同体の決定に影響を与える「空席戦術」を採用し、他の加盟国との間で緊張が高まることもありました。このような背景から、1966年には「ルクセンブルクの妥協」が成立し、国家の利益に反する事案についての拒否権が認められることとなりました。

拡大と選挙

1960年代には、EECの初の拡大が検討され、デンマーク、アイルランド、ノルウェー、イギリスが加盟希望を表明しましたが、フランス大統領ド・ゴールがイギリスの加盟に反対したため、加盟交渉は停滞しました。しかし、ド・ゴールの辞任後にはこの加盟交渉が再開され、1973年にはデンマーク、アイルランド、イギリスの3カ国が正式にEECに加盟しました。このようにして、EECの枠組みは徐々に拡大していきました。

また、1979年には欧州議会の設置から直接選挙が実施され、議会が民主的な手続きを通じて権限を拡大することが進みました。これにより、EECの運営はより透明性を持つようになり、議会の意見が政策に影響を及ぼす度合いも高まりました。

欧州連合への統合

1993年に欧州連合（EU）が発足した際、EECはEUの主要な柱として位置づけられました。ただし、2009年のリスボン条約発効により、EECはその機能を事実上廃止され、EUの枠組みに全面的に組み込まれる形となりました。しかし、EECがもたらした経済的な統合および政策の枠組みは、現在のEUにも影響を与え続けています。

目的と成果

EECの設立目的は、「平和と自由を維持し、ヨーロッパの国々をより密接に統合する基礎を築くこと」でした。具体的には、関税同盟の設立、共通の農業政策の実施、地域の拡大などが掲げられており、これらの目的に向けて多くの成果を上げてきました。EECはその後のEUの発展にも寄与した重要な機関であり、欧州の経済的な安定と連携を強化する要因となりました。

結論

EECは、設立以来多くの国々を巻き込みながらヨーロッパの統合に寄与してきました。その経済的、政治的な結束は、現在のEUにおいても重要な基盤となっています。EECの歴史は、平和で繁栄したヨーロッパを築くための挑戦と成功の物語です。

もう一度検索