歌う剣を取り戻せ

『歌う剣を取り戻せ』（原題：Knighty Knight Bugs）は、1958年に公開された、アメリカ合衆国のアニメーションスタジオ、ワーナー・ブラザース製作によるルーニー・テューンズの短編映画です。第31回アカデミー賞短編アニメ部門を受賞した名作として知られています。旧日本語吹き替え版では『黒騎士とドラゴン』というタイトルで公開されました。

物語は、アーサー王の円卓会議から始まります。王家の秘宝である「歌う剣」が、恐るべき黒騎士（ヨセミテ・サム）に盗まれたのです。黒騎士はドラゴンを操り、誰もが彼を恐れており、歌う剣を取り戻す者はいません。そこに、城で道化師として働いているバッグス・バニーが、軽妙な笑みを浮かべて登場します。

アーサー王は、バッグスに歌う剣を取り戻すよう命じます。失敗すれば、引き回し、火炙り、そしてギロチンの刑という厳しい条件付きです。一方、黒騎士の城では、黒騎士とドラゴンが昼寝をしています。バッグスは城に忍び込み、宝箱の中に安置されている歌う剣を見つけます。しかし、剣が奏でる音楽で黒騎士が目覚めてしまいます。

バッグスはなんとか逃げ出しますが、黒騎士はドラゴンに乗って追いかけてきます。城内で、黒騎士は様々な策略で歌う剣を取り返そうとしますが、バッグスの機転とユーモアの前にことごとく失敗します。一息ついたバッグスが城から逃げ出そうとしますが、これは黒騎士の罠でした。命からがら逃げ惑うバッグス、しかし、その勢いで黒騎士とドラゴンは火薬庫に突っ込んでしまいます。

ドラゴンが火を噴いた瞬間、火薬庫はロケットのように空高く舞い上がり、黒騎士とドラゴンは月まで飛んでいってしまったのです。バッグスは、「タフア・フアイ」という旋律を奏でる歌う剣を手に、勝利を収め、去って行きます。

本作は、フリッツ・フレレング監督、メル・ブランクの声優、ウォーレン・フォスターの脚本など、多くの才能が集結して制作されました。音楽はミルト・フランクリンが担当し、アニメーション制作にはバーギル・ロス、ゲリー・チャイニクィー、アート・ディビスらが携わっています。その他にも、ジョン・W・バートン（製作総指揮）、ホーリー・プラット（レイアウト）、トム・O・ローリン（背景画）、トレッグ・ブラウン（映画製作）など、多くのスタッフが関わった大作です。

アカデミー賞受賞作である『歌う剣を取り戻せ』は、その後のルーニー・テューンズシリーズにも影響を与えました。例えば、『タイニー・トゥーンズ』では、バッグス・バニーとオスカー像を巡るストーリーが展開されています。このエピソードでは、パリで開かれた受賞感謝祭でバッグスが誘拐され、教え子たちが彼の救出とオスカー像の奪還に奮闘する様子が描かれています。

『歌う剣を取り戻せ』は、コミカルな演出とスリリングな展開、そして個性豊かなキャラクターたちが織りなす、何度でも楽しめる名作アニメーションです。バッグス・バニーの機知に富んだ行動と、黒騎士のコミカルな悪役ぶりは、子供から大人まで幅広い世代に受け入れられています。アーサー王伝説を題材としながらも、ルーニー・テューンズらしいユーモラスな世界観が魅力となっています。

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