歌う白骨

『歌う白骨』（The Singing Bone）は、1912年に発表されたオースティン・フリーマンによる短編推理小説集です。この作品集は、前半部分で殺人犯による犯罪の実行過程が詳細に描かれ、後半部分で法医学者のアマチュア探偵であるソーンダイク博士がその事件の真相を論理的に推理するという、「倒叙」ミステリーという形式を確立した最初の作品群として知られています。

主な登場人物

ソーンダイク博士: 法医学者であり、卓越した推理力を持つアマチュア探偵です。冷静沈着で論理的な思考を武器に、難解な事件を解決に導きます。
ジャービス医師: ソーンダイク博士の助手であり、相棒として事件の捜査に協力します。医師としての知識や観察眼を生かし、ソーンダイク博士をサポートします。

収録作品

『歌う白骨』には、以下の作品が収録されています。

1. The Case of Oscar Brodski　「オスカー・ブロズキー事件」: 「倒叙」ミステリーの最初の作品として知られています。緻密な犯罪計画と、それを暴くソーンダイク博士の推理が読みどころです。
2. A Case of Premeditation　「計画殺人事件」: 計画的に実行された殺人事件の真相に、ソーンダイク博士が迫ります。
3. The Echo of a Mutiny　「歌う白骨（反抗のこだま）」: 作品集のタイトルにもなっている作品。一風変わった事件の背景にある人間ドラマを描いています。
4. A Wastrel's Romance　「おちぶれた紳士のロマンス」: 身を落とした紳士にまつわる事件を、ソーンダイク博士が解き明かします。
5. The Old Lag　「老いたる前科者」: 本作品集の中で唯一、「倒叙」形式ではない作品です。前科者の過去と現在が交錯する物語。

作品の特徴

『歌う白骨』の特徴として、犯人が必ずしも罰せられない作品が含まれている点が挙げられます。殺人犯が逃亡に成功したり、殺人が未遂に終わったり、被害者側が犯人を許したりするなど、結末が従来の推理小説とは異なる場合があります。この点は、後の「刑事コロンボ」シリーズや、「倒叙」ミステリーの三大長編とは異なる点です。

日本語訳

日本語訳書としては、大久保康雄訳によるものが中央公論社から1963年に刊行され、後に嶋中文庫から2004年に再刊されています。

『歌う白骨』は、「倒叙」ミステリーの原点として、推理小説史において重要な位置を占める作品です。緻密な犯罪描写と、それを凌駕するソーンダイク博士の推理、そして従来の推理小説とは異なる結末など、多くの魅力が詰まった作品集です。

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