歌の祭典 (NHK)

歌の祭典

『歌の祭典』（うたのさいてん）は、1968年4月7日から1971年4月4日までの約3年間、NHK総合テレビジョンで放送された大型音楽番組です。当時の日本のテレビ放送におけるカラー化の波の中で、本番組は放送開始当初から最終回まで一貫してカラーで制作・放送された、先進的な番組の一つでした。毎週日曜日の夜、多くの視聴者に親しまれ、当時の人気歌手たちがその歌声を披露する場となりました。

番組の企画意図と制作の舞台

本番組は、それ以前に放送されていた歌謡番組『歌のグランド・ショー』を全面的に見直し、内容を刷新する形で企画されました。時代の変化に対応し、より魅力的で洗練された音楽番組を目指したと言えます。

番組制作上の大きな特徴は、公開収録形式を採用していた点です。収録は、当時NHK東京放送会館（現在のNHK放送センターとは異なる場所にあった旧施設）に併設されていた初代NHKホールで行われていました。この初代NHKホールは、1973年に現在のNHKホールが完成するまで、NHKの公開番組の主要な舞台として機能しており、『歌の祭典』も毎週、大勢の観客を招いて華やかなステージを繰り広げていました。観客の熱気の中で行われる生演奏や歌唱は、テレビ画面を通してもその臨場感が伝わり、番組の大きな魅力となっていました。

番組の顔ぶれ：司会者

番組の進行役である司会者は、放送期間中に一度交代しています。これは、番組に変化を与え、新たな魅力を創出する意図があったと考えられます。

番組開始から1970年2月8日まで: 男性四重唱団として幅広い世代に知られていたダークダックスと、当時を代表する女性ポップス歌手であった伊東ゆかりが務めました。安定感があり、かつ華のある組み合わせとして、番組の基盤を築きました。
1970年2月15日から番組終了まで: 喜劇役者としても活躍した谷啓と、フォークシンガーとして独自の地位を確立していた森山良子が引き継ぎました。この組み合わせにより、番組の雰囲気に新風が吹き込まれ、より親しみやすく、多様な音楽に対応できる体制となりました。二代目の司会陣は、番組が終了するまでその役割を果たしました。

放送された時間帯

『歌の祭典』は、日曜日の夜という、多くの家庭でテレビが視聴されるゴールデンタイムに放送されていました。しかし、その放送時間帯は途中で変更されています。

放送開始から1969年4月6日まで: 毎週日曜日、午後7時30分から午後8時15分までの45分枠で放送されていました。
1969年4月13日から番組終了まで: 放送時間が変更され、開始時刻が10分前倒しされ、毎週日曜日の午後7時20分からとなりました。同時に、終了時刻も午後8時00分に変更され、全体としての放送枠が5分短縮されて40分となりました。

この時間変更は、当時のNHK全体の番組編成の見直しや、視聴者のライフスタイルの変化に対応するための措置だったと推測されます。また、本放送以外にも、曜日や時間を改めて再放送が行われることもあり、多くの視聴者に番組を楽しむ機会が提供されていました。

まとめ

『歌の祭典』は、初代NHKホールという歴史的な舞台から、当時のトップスターたちの歌声をカラーで全国に届けた、1960年代後半から1970年代初頭を代表する歌謡番組でした。前番組からの刷新、特徴的な公開収録、そして司会者の個性的な顔ぶれなど、様々な要素が組み合わさり、毎週日曜日の夜のひとときを彩りました。日本のテレビ音楽番組の歴史において、確かな足跡を残した番組と言えるでしょう。

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