歌川芳邨

歌川芳邨（うたがわ よしむら）は、弘化3年（1846年）9月生まれ、没年は不明の浮世絵師です。江戸時代末期から明治時代にかけて活躍しました。

来歴

歌川芳邨は、人気浮世絵師である歌川国芳の門人でした。本姓は伊藤で、歌川の画姓を名乗り、静斎（せいさい）、蘭渓（らんけい）という号を用いていました。当初は「芳村」と名乗っていましたが、明治9年（1876年）からは「芳邨」と改名しています。また、俳諧にも通じており、歌舌（かぜつ）という俳号を持っていました。

芳邨の作画期は、文久年間から明治10年代頃にかけてです。主に西南戦争前後の錦絵を制作しており、当時の社会情勢や風俗を反映した作品を多く残しています。初期には下谷御徒町二丁目に住んでいましたが、後に坂本町へ移り、明治11年（1878年）頃には浅草三筋町三十六に居を構えました。晩年には佐藤山斎に師事し、南蘋派（なんぴんは）の画風を学んでいます。

作品

歌川芳邨は、以下のような作品を手がけています。

「東京鉄道馬車図 浅草寺景」 大判錦絵3枚続（郵政博物館所蔵）
「熊本県賊徒退治之図」 大判錦絵3枚続 ※明治9年、「静斎芳邨」の落款
「東京日々新聞 山口県下賊徒追討図」 大判錦絵3枚続（萩博物館所蔵）※同上
「東京日々新聞 思案橋の暴徒事件」 大判錦絵3枚続（江戸東京博物館所蔵）※同上
「東京名所之内 赤坂紀尾井坂之図」 大判錦絵3枚続 ※明治11年、「静斎芳邨」落款

これらの作品から、芳邨が当時の東京の様子や事件に関心を寄せ、それを浮世絵として表現していたことがわかります。特に、西南戦争に関連する作品は、当時の社会情勢を伝える貴重な資料となっています。

参考文献

歌川芳邨についてより詳しく知りたい場合は、以下の文献を参照してください。

井上和雄 『浮世絵師伝』 渡辺版画店、1931年 ※国立国会図書館デジタルコレクションに本文あり。154コマ目。
日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』（第2巻） 大修館書店、1982年

関連項目

浮世絵
歌川国芳
西南戦争
* 南蘋派

歌川芳邨の作品は、当時の社会や文化を知る上で貴重な資料であり、浮世絵ファンのみならず、歴史研究者にとっても重要な存在です。

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