歌川芳雪

歌川芳雪（生没年不詳）は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師であり、歌川国芳の門人として知られています。通称は孝太郎、画姓として歌川を称し、一嶺斎（いちりょうさい）という号を用いていました。彼は江戸本所一ツ目の船宿八幡屋の子として生まれました。

作画期は天保から文久の頃にかけてで、特に武者絵を得意としていました。歌川国芳門下の美男子として知られ、国芳との親密な関係が伝えられています。菊慈童の刺青を全身に朱色入りで施したという逸話も残っています。

深川の芸者を妻に迎え、代地河岸で料理屋を営むも失敗。その後、金策のために妻が家出し、芳雪自身も精神に異常をきたし、文久年間に自刃したと伝えられています。しかし、これらの情報は確定的ではなく、彼の生涯には謎が多い部分も残されています。

代表的な作品

「薩摩守忠度」 大判錦絵3枚続（東京都立図書館所蔵）：天保14年（1843年） - 弘化4年（1847年）に制作。「一嶺斎芳雪」の落款があります。
「為朝猪を退治する図」 大判錦絵3枚続（静岡県立中央図書館所蔵）：天保14年 - 弘化4年の作。「一嶺斎芳雪」の落款があります。
「東都名所　高輪ヨリ品川お見る図」 大判錦絵3枚続：嘉永元年（1848年）に制作。
「江戸名所乃内浅草」 大判錦絵（静岡県立中央図書館所蔵）
「江戸名所乃内王子」 大判錦絵（静岡県立中央図書館所蔵）
「相州江之島詣春の賑」 大判錦絵3枚続（藤沢市所蔵）：嘉永年間に制作。「一嶺斎芳雪画」の落款があります。
「東西大相撲の図」 大判錦絵3枚続：刊年未詳。
「東名所の内　辰巳住梅はる　深川八幡宮」 大判錦絵

参考文献

日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）大修館書店、1982年
吉田漱『浮世絵の基礎知識』大修館書店、1987年
* 柏木智雄・内山淳子・片多祐子『はじまりは国芳　江戸スピリットのゆくえ』大修館書店、2012年

歌川芳雪は、国芳の作風を受け継ぎつつも、独自の表現を追求した浮世絵師として評価されています。彼の作品は、武者絵を中心に、江戸の名所や風俗を描いたものが多く、当時の人々の生活や文化を垣間見ることができます。彼の作品は、現在も各地の美術館や図書館に所蔵されており、その芸術性は高く評価されています。また、国芳との関係性や波乱万丈な生涯は、多くの人々の興味を引きつけ、様々な研究や創作の題材となっています。

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