歌川豊国 (2代目)

二代目歌川豊国：師の画風を受け継ぎ、波乱の生涯を送った浮世絵師

二代目歌川豊国は、江戸時代を生きた浮世絵師です。生没年は不明ながら、初代歌川豊国の門人として、その才能を遺憾なく発揮しました。名は源蔵、様々な号をもち、生涯において幾多の変遷を経験した人物として知られています。

初代豊国に入門した当初は国重と名乗っていたとされ、後に豊重と改名、豊国忰豊重とも称しました。文政7年(1824年)以前には初代豊国の養子となり、初代の死後、文政8年(1825年)に二代豊国を襲名します。しかし、この襲名は当時の歌川派内で物議を醸し、受け入れられなかったという記録が残されています。『名人忌辰録』や『狂歌人名辞書』といった文献には、襲名に反対する声があったこと、そして一度は元の国重に戻したという記述も見られます。この騒動は、後に三代目豊国を名乗る国貞が、二代目豊国の存在を無視して二代目を名乗ったという事実からも、当時の複雑な状況を伺い知ることができます。

彼の画業は、師である初代豊国の画風を忠実に踏襲した堅実な作風でした。合巻の挿絵、美人画、役者絵、芝居絵など、幅広いジャンルを手掛け、高い評価を得ていました。文政11年(1828年)頃には本郷春木町に住んでいたことから、「本郷豊国」と呼ばれるようになり、同時代の二代目歌川豊国と区別されました。

天保5年(1834年)頃を境に、彼の作品は途絶えます。『名人忌辰録』によると、豊国襲名に関する騒動が原因で絵師を廃業し、本郷三丁目で陶器商を営んだと伝えられています。晩年については不明な点が多く、謎に包まれています。弟子には、二代目歌川国重、歌川国盛、歌川国鶴らがおり、後進の育成にも尽力しました。

主な作品

豊国の作品は、その多くが合巻の挿絵です。代表的な作品としては、曲亭馬琴作の『傾城水滸伝』、柳亭種彦作の『笹色猪口暦手』、山東京山作の『誂織八丈縮緬』、三代目尾上菊五郎作の『尾上松緑百物語』、桜川慈悲成作の『今昔虚実録』などの挿絵が挙げられます。これらの作品は、当時の社会情勢や風俗を反映した内容となっており、高い芸術性と歴史的価値を併せ持っています。

錦絵作品も多く残されており、ボストン美術館、国立国会図書館、日本浮世絵博物館などに所蔵されています。代表的な作品には、「定助実ハ笹野権三・市川団十郎」、「稲の谷半兵衛・坂東三津五郎」、「名勝八景」、「新製錦手猪口」、「風流東姿十二支」、「東名所　芝八景　増上寺晩鐘」、「新製姿見酒盃今様美人合」などがあります。これらの作品からは、役者絵、風景画、美人画など、多様な表現技法と高い描写力が見て取れます。

謎に包まれた生涯と歴史的意義

二代目歌川豊国の生涯は、成功と挫折、そして謎に満ちた部分が多く残されています。襲名騒動や廃業、晩年の消息など、不明な点は多いものの、彼の作品は、当時の浮世絵界における重要な足跡を残しています。師である初代豊国の画風を忠実に継承しつつも、独自の表現を追求した彼の作品は、現代においても高い評価を得ており、江戸時代の文化を知る上で貴重な資料となっています。その生涯は、浮世絵師としての苦悩と葛藤、そして時代の流れの中で翻弄された一人の芸術家の物語として、これからも研究が続けられるでしょう。

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