歌舞伎 (第1次)

歌舞伎

『歌舞伎』は、1900年から1915年にかけて発行された歌舞伎に関する雑誌です。通常は第1次『歌舞伎』と呼ばれており、三木竹二が中心となって編集作業を行い、彼の兄である森鷗外も寄稿していました。全175号が刊行され、創刊時の定価は10銭、判型は菊判でした。

概要

この雑誌は、毎月「劇評・考証・演劇評論・劇界の情報」など多岐にわたる内容を掲載していました。その特徴は、特に評論や考証に多くのページが費やされていた点で、他の雑誌と比べて研究的な性質が強いとされています。初期の段階では古典劇に関する記事が大部分を占めていましたが、時が経つにつれて新派劇の記事も増えていきました。

また、『歌舞伎』では海外からの寄稿も行われ、西洋演劇に関する紹介や分析も行われていました。ストリンドベリやイプセンの脚本が翻訳されるなど、国際的な視野を持つ雑誌となっていました。編集方針として、女性の寄稿者も多く参加し、森久子や岡田八千代といった女性たちが劇評などを執筆していました。

型の記録

『歌舞伎』には、さまざまな「〇〇の型」と名のつけられた記事が含まれており、これらは特に「型の記録」として知られています。これは、実際に上演された舞台の様子を詳細に記録したもので、舞台の装置や衣装、役者の所作に至るまでを丹念に記述しました。これにより、演劇界における重要な資料として、多くの研究者によって重視されています。

型の記録は、初めは幕内の資料の活字化を進め、1905年頃からは観客目線での客観的な描写が定着しました。明治40年代には、型の記録が各号の半分を占めるようになり、劇評と考証の記事が主要なコンテンツとなっていきました。このように、『歌舞伎』は当時の劇界の危機感を反映した記録主義を持っていました。

沿革

1897年に『歌舞伎新報』が休刊を迎え、その2年後に新たな歌舞伎雑誌の創刊に向けた会合が行われました。岡野碩や三木竹二、伊原青々園などの編集者たちが集まり、討議を重ねた結果、新雑誌が『歌舞伎』として創刊されることになりました。創刊号の題字は尾崎紅葉が手がけ、巻頭には高浜虚子の句評が寄せられました。

創刊後、三木竹二は多忙を極め、他のメンバーは様々な事情で活動を減少させましたが、竹二の努力によって雑誌は運営されていきました。特に第2号以降は、劇評が合評形式となり、初期から多様な執筆が行われました。

森鷗外は、創刊当初から活発に寄稿しており、1902年には彼の戯曲『玉篋両浦嶼』が掲載され、その後の歌舞伎公演と連携した特集が組まれるなど、メディアミックスの先駆けとしても評価されます。1904年には、『日蓮上人辻説法』が臨時号で刊行されるなど、海外演劇の紹介も模索されました。

評価と影響

『歌舞伎』は、古典劇演出の伝統を保持する記録として、また近代劇の紹介に尽力したことで広く評価されました。特に藤田洋は、演劇批評を新たな高みに引き上げたとし、革命的な役割を果たしたと称賛しています。総じて、『歌舞伎』は日本演劇史において重要な地位を占める雑誌であり、2010年から2013年にかけて復刻版の出版も行われ、研究の基盤が整備されています。

年表

• - 1897年 - 『歌舞伎新報』が休刊。
• - 1900年 - 『歌舞伎』創刊。
• - 1902年 - 森鷗外の『玉篋両浦嶼』発表。
• - 1908年 - 三木竹二の死去、編集が引き継がれる。
• - 1915年 - 終刊。

もう一度検索