岡田八千代

岡田八千代：多才な才能を開花させた明治・昭和期の女性作家

岡田八千代（おかだ やちよ、1883年12月3日 - 1962年2月10日）は、明治から昭和期にかけて小説家、劇作家、劇評家として活躍した人物です。 芹影（きんえい）、芹影女、伊達虫子といった筆名も用いました。 演劇界で活躍した小山内薫は実兄にあたります。

生い立ちと文学への目覚め

広島市大手町で生まれた岡田八千代は、旧津軽藩士の父と、江戸の旗本を祖とする母の間に生まれました。幼少期には東京へ移り、兄である小山内薫と共に育ちます。幼い頃から芝居に親しみ、文学や演劇への関心を深めていきました。共立女子職業学校を卒業後、成女学校専科へ進み、19歳で卒業。この頃から文筆活動を開始し、雑誌『明星』や『婦人界』に作品を発表しました。

結婚と文筆活動の展開

1906年、森鴎外の世話により画家の岡田三郎助と結婚。結婚後も文筆活動を精力的に続け、平塚らいてうらが創刊した青鞜社の顧問となり、『青鞜』にも寄稿しました。この時期には、年に4〜10件もの作品を雑誌に掲載するなど、その創作意欲は非常に旺盛でした。

夫の三郎助が八千代をモデルにした作品を発表し話題を集めましたが、夫婦仲は次第に悪化。1926年には別居し、三郎助が亡くなるまで別居生活が続きました。

演劇活動への情熱

演劇評論だけでなく、新派や歌舞伎の公演にも深く関わりました。1922年には、河合武雄や二代目市川猿之助からの依頼で『芽生座』を設立し、子供たちのための演劇活動にも力を注ぎました。また、1935年には新派の若手俳優らと『未明座』を組織し、公演を行いました。

1923年には、親友の長谷川時雨と共同で『女人藝術』を創刊しましたが、関東大震災の影響により2号で廃刊となりました。

晩年と文学活動の再開

1930年には、一時的に和解した夫と共にパリへ渡りますが、再び別れ、八千代は1934年までパリに滞在しました。帰国後は、演劇活動を再開し、また長谷川時雨の『輝ク会』を手伝い、中国中南部への慰問にも参加しました。戦後は、『日本女流劇作家会』を設立し、会報『アカンサス』に執筆したり、ラジオドラマの脚本や演出を手がけたりするなど、多岐にわたる活動を展開しました。

1962年、インフルエンザによる肺炎で亡くなり、青山霊園にて夫の傍らに眠っています。2016年には、八千代と夫の三郎助、そして画家である辻永の姿を捉えたドキュメンタリー映画「あるアトリエの100年」が制作され、その生涯が改めて注目を集めました。

著書

岡田八千代は、小説、劇作、随筆など、多岐にわたるジャンルの作品を執筆しました。

代表的な作品には以下のものがあります。

『門の草』（1906年、短編集）
『新緑 上・下』（1907年、長編小説）
『黄橙』（1908年、小説）
『恐怖』（1909年、長編小説）
『絵具箱』（1912年、小説集）
『かをり』（1913年、小説）
『八千代集』（1917年、小説集）
『若き日の小山内薫』（1940年）
* 『白蘭』（1943年、随筆集）

これらの作品は、近代女性の心理や社会状況を繊細に描いたものとして評価されています。

岡田八千代の功績

岡田八千代は、小説家、劇作家、劇評家として、明治から昭和にかけての文学・演劇界に大きな足跡を残しました。女性の視点から社会や人間関係を深く掘り下げた作品は、現代においても読む者に深い感動を与えています。また、演劇活動を通じて後進の育成にも貢献し、その多才な才能は、後世に大きな影響を与えました。

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