正座

正座 - 日本の伝統的な座り方

正座（せいざ）は、正しい姿勢を保ちながら膝を揃えたまま座る日本独特の座り方です。この座り方は、特に畳の上で行われることが多く、日本人の生活文化として深く根付いています。正座は、神道や仏教の儀式で用いられる体勢として、また武士や茶人、女性の日常的な座法としても重要です。

歴史的背景

正座の起源を探ると、まずはこの座り方が一般的になった時期や、「正座」という言葉の使用がいつから始まったのかを分けて考える必要があります。元々、正座は神道や仏教において神や仏を拝む時にのみ用いられ、日常生活では胡座（あぐら）や立膝が一般的でした。平安時代の服装では、十二単や神職の袍が正座には不向きであり、あぐらを組むようにデザインされていました。

江戸時代初期には、江戸幕府が小笠原流の礼法を取り入れ、全国の大名が将軍に対して正座をすることが義務付けられたことが、正座の普及を助けました。また、この時期に庶民の家にも畳が広まったことが影響しています。入澤達吉の研究では、元禄～享保の時代に正座が広まったとされていますが、16世紀後半にはすでに下級武士や農民の間でも浸透していたことが指摘されています。

以前は「正座」とは呼ばれず、代わりに「かしこまる」や「つくばう」と表現されていました。「正座」という言葉が文献に登場するのは明治以降で、最も古い使用例は1882年に発表された『小学女子容儀詳説』に見られます。

作法とその影響

正座を行う際は、最初にひざまずき、臀部をかかとに乗せて跪座となります。そこから臀部の下にかかとを移動して、足を伸ばす形になります。手は控えめに膝の上に置き、背中をまっすぐにします。作法では、男性がわずかに膝を開くのに対し、女性は膝を閉じるのが伝統です。ただし、一部の武道では、急所を守る目的で男女問わず膝を閉じることが求められる場合もあります。

正座する際は、場所に関係なく行うことができますが、畳やカーペットの上では比較的楽に座ることができます。正式な場ではあぐらをかくことは避けられる場合が多いですが、年配者などの都合であぐらをかくことが許容されることもあります。正座は、茶道や日本の舞踊、武道、神道など、さまざまな日本文化の中で必須の作法であり、一般的に神事や仏事に参列する際には正座が求められます。

日本文化における正座

正座は、様々な日本の伝統芸能に頻繁に取り入れられています。武道においては、座った状態から攻撃を行う型が存在し、これは他国には見られない特異な形式です。また、文楽や能楽、茶道などの日本文化の中でも正座が重要視されています。茶道では、江戸時代以降「正座」が定着しましたが、最初の茶人である千利休は胡座を利用していたとも言われます。

正座は地域によっても名称が異なります。沖縄では「ひざまんちゅー」と呼ばれ、富山では「ちんちんかく」との表現があります。

身体への影響

正座は一時的に血流の低下を引き起こし、長時間の保持は足に痺れを生じることがあります。他国では「不健康な座り方」と見なされることもあります。日本では、「合曳」（正座椅子）という道具があり、これは長時間の正座を楽にするために使われます。

注意点

正座は体への負担が大きく、特に脚や膝に持病のある場合は注意が必要です。また、教育や家庭内でのしつけで体罰として用いられることがあるため、その取り扱いに関しては慎重さが求められます。

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