正徹

正徹：室町時代の歌僧、古典学者

正徹（しょうてつ、1381年 - 1459年）は、室町時代中期の臨済宗の歌僧であり、歌人、古典学者としても知られています。道号は清巌・清岩、庵号は松月庵・招月庵と称しました。

生涯

石清水八幡宮に仕える家柄に生まれ、父は小松（または小田）康清とされています。和歌を冷泉為尹と今川了俊に学び、応永21年（1414年）に出家し、正徹と号しました。京都東福寺の書記であったことから徹書記とも呼ばれました。室町幕府6代将軍足利義教に忌避された時期もありましたが、義教の没後、歌壇に復帰し活躍しました。

歌人としての功績

正徹は、2万首近くの歌を詠んだとされ、室町時代最大の歌人として知られています。二条派からは異端視されることもありましたが、藤原定家を尊崇し、前衛的、象徴的、夢幻的な独自の幽玄の風体を確立しました。門下には心敬などがいます。家集に『草根集』、歌論に『正徹物語』があります。

『正徹物語』では、歌道の数寄（愛好）の度合いを、茶道になぞらえて「茶食らひ」「茶飲み」「茶数寄」の3つに分けて説明しています。これは室町時代的なユニークな比喩であり、歌道に対する深い洞察を示しています。

茶食らひ：茶の味も分からず、ただ多く飲む人を指し、歌道では、環境や仲間を問わず、ただ詠むことを好む歌人を指します。
茶飲み：茶の産地や時期に詳しい人を指し、歌道では、和歌の表現や技法に精通しているだけの人を指します。
茶数寄：茶道具を大切にする人を指し、歌道では、硯や文台などの道具を整え、常に歌を詠む会を開くような人を指します。

古典学者としての功績

正徹は古典学者としても高く評価されており、『源氏物語』の研究や『伊勢物語』などの物語類、藤原定家などの歌人の家集の書写を通じて、古典籍の保存と流布に大きく貢献しました。特に、正徹が書写した『徒然草』は現存最古の写本として貴重であり、彼が『徒然草』を『枕草子』に続く文学として捉えたことは、当時の文学史において優れた見識であったと言えるでしょう。

没後

没後500年以上経った2001年、出身地の岡山県矢掛町小田地区では、「正徹を顕彰する会」が結成され、井原鉄道小田駅前に顕彰碑が建てられました。これは、正徹の功績を後世に伝えるための活動の一環です。

参考文献

稲田利徳『正徹の研究 - 中世歌人研究』広島大学、1979年。

関連項目

正徹本源氏物語

外部リンク

正徹（おかやま人物往来） - 岡山県立図書館

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