正法寺 (新居浜市)

正法寺（しょうぼうじ）

正法寺は愛媛県新居浜市の大生院にある真言宗御室派の寺院です。正式名称は「石鈇山往生院正法寺」であり、嵯峨天皇により創設された勅願寺としても知られています。さらに、伊予三名山の一つである笹ヶ峰の別当寺でもあります。地域名「大生院」は、この寺院の号に由来しています。

歴史

石鈇山往生院正法寺は平安時代初期に賀美能宿禰によって設立されました。寺の由緒によれば、上仙が開基とされています。古代から神が祀られていた神野郡は、東大寺の穀倉地として重要な場所でもあり、大寺が人々の菩提寺として存在していたと記録されています。正法寺はかつて七堂伽藍を有する伊予国最大の寺院でしたが、戦国時代の天正年間に戦火によって全焼しました。再建されたものの、渦井川の氾濫などにより元禄時代に山の裾へと移転し、仁和寺の末寺として新たな歴史が始まりました。

現在の客殿や旧本堂は、文政8年（1825年）に智雄の時代に建設されたもので、棟札には「奉再建 本堂一宇」との記載があります。この再建には多くの人々の奉仕と寄進があり、旧本堂の造りは近代名作として評価されています。特に建築に関わった人々の技術と誠意が伝わる建物となっています。

小松藩治世の天保時代には栄澄上人や栄尊上人など多くの先師が輩出され、近藤篤山の漢詩には信徒との深い関係や、貧困の中でも心に余裕があった良き時代が描写されています。

正法寺と笹ヶ峰

寺の伝承や大生院の村庄屋文書によると、正法寺は平安時代から笹ヶ峰の別当寺であり、石鈇大権現を頂上に勧請して修験道の場として栄えてきました。奈良時代には笹ヶ峰が石鎚山を指す伝説があり、現在も毎年7月には笹ヶ峰に登拝される行事が行われています。また、JR中萩駅は正法寺と笹ヶ峰信仰の乗降駅として設けられ、駅前には「石鈇山」の扁額が下がる石の鳥居が立っています。

笹ヶ峰は新居浜市の西南に位置し、標高1860mで、四国の第三位として知られる山でもあります。この山は古来より聖山としての位置付けがなされており、多くの登山者に親しまれています。

新居誕生史

特筆すべきは、伊予の神野郡から宮中に仕えた女性が嵯峨天皇の乳母となり、その功績で神野宿禰の称号を賜ったという非凡な歴史です。後にこの女性の出身地から天皇の名が授けられ、神野郡が新居郡に改名されることになります。この改名は日本書紀にも記載されており、新居郡の誕生をもたらしました。

神野宿禰が退官後、開基として正法寺を設立したのです。

近年の発掘調査

正法寺周辺にはかつて広大な境内が広がっていたことが明らかになってきました。昭和5年（1930年）には、この付近の田圃から多くの瓦や泥塔が発見され、正法寺の歴史的な証拠となりました。これらの発見は、寺が長年にわたり地域の信仰の中心であったことを物語っています。

また、最近の調査によると、正法寺の周辺にはかつて中門や金堂、講堂といった七堂伽藍を構成する多くの建物が存在したことが示唆されています。これらの発掘は、奈良時代末から鎌倉時代初期にかけて使用されていた瓦や仏塔、陶器片も含まれ、寺の繁栄を示す重要な要素となっています。

境内の構成

正法寺の境内には様々な重要な建物が存在します。山門をくぐると、本堂には大聖不動明王が祀られ、薬師堂には新居の薬師如来三尊立像が安置されています。さらに、榮澄廟や六地蔵堂、客殿といった建物が境内に点在しており、それぞれが有名な歴史を持っています。

周辺の神社

周辺には王神社や妙見神社など、いくつかの神社も存在し、それぞれに祭神を祀り、地域の信仰を支えています。

正法寺は地域の歴史や文化に深く根ざしている寺院で、今も多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索