新居郡

新居郡（にいぐん）の歴史

新居郡は、現在の愛媛県新居浜市と西条市にまたがる地域に、かつて存在した郡です。その歴史は古代にまで遡り、神聖な地として崇められてきました。この地がどのように発展し、変遷を遂げてきたのかを詳しく見ていきましょう。

古代から平安時代

新居郡の地は、西日本最高峰の石鎚山の麓に位置し、古代から人々が居住していたとされています。第12代景行天皇の皇子、武国凝別命（たけくにこりわけのみこと）がこの地を平定するために派遣され、拠点を置いたと伝えられています。成務天皇7年には、皇祖神である天照大神と国土開発の祖神である武国凝別命を祀る伊曽乃神社が創建されました。

この地域は、伊曽乃神社を中心に神々が祀られていたため、「神野」（かみの）と呼ばれていたとされています。大宝元年（701年）の大宝律令制定以前は「神野評」（かんのこおり）と記されていましたが、律令制度による地方行政区画の制定により神野郡となりました。天平10年（738年）には法隆寺の資財帳に「伊豫国神野郡」の記述が残っています。

霊亀3年（717年）には、国郡郷里制により神野郡に六つの郷（丹上郷、丹比井郷、島山郷、賀茂郷、神戸郷、橘郷）が置かれました。延暦11年（791年）には、嵯峨天皇の諱が乳母の出身地である神野郡に由来し、「賀美能（かみの）親王」と名付けられたことから、神野郡は朝廷により改名されることとなり、大同4年（809年）に「新居郡」が誕生しました。

鎌倉時代から江戸時代

鎌倉時代から戦国時代にかけて、新居郡は武蔵武士の流れをくむ金子氏の城下町として栄えました。江戸時代の寛永13年（1636年）には、一柳直盛が新居郡に転封となり、西条藩が成立しました。西条藩は紀州徳川家と深い関わりを持ちながら発展しました。元禄4年（1690年）には別子銅山が開坑され、住友家が経営を始め、関連事業を発展させたことで、住友財閥が誕生する礎となりました。

新居浜と西条は、この銅山開発を契機に工業分野を中心に発展を遂げました。

明治時代以降

明治11年（1878年）に郡区町村編制法が施行されると、行政区画として新居郡が発足し、郡役所が西条町に設置されました。明治初頭の支配状況は複雑で、戊辰戦争や廃[[藩置県]]の影響を受け、松山藩、高知藩、倉敷県、丸亀県、松山県、石鉄県と管轄が頻繁に変わりました。最終的に愛媛県の管轄となり、郡として再編されました。

町村制の施行により、明治22年（1889年）には西条町、玉津村、新居浜村、金子村など1町21村が発足しました。その後、新居浜村が町制を施行して新居浜町となり、氷見村も氷見町となりました。郡制が施行され、郡役所が運営されましたが、大正時代に郡会が廃止され、郡役所も廃止されました。昭和に入ると、新居浜町が新居浜市となり、西条町も西条市となりました。その後、周辺の町村が合併し、最終的に昭和31年（1956年）には加茂村と大保木村が西条市に編入、昭和34年（1959年）には角野町が新居浜市に編入され、新居郡は消滅しました。

新居郡の変遷

新居郡は、古代から神聖な地として、また中世には武士の拠点として、近世には産業の中心地として、その時代ごとに重要な役割を果たしてきました。その変遷は、現在の新居浜市と西条市の発展に大きく影響を与えており、この地域の歴史と文化を理解する上で欠かせない要素となっています。

新居郡の構成町村

町村制施行時（明治22年）の新居郡の構成町村は以下の通りです。

西条町
玉津村
新居浜村
金子村
高津村
垣生村
大島村
多喜浜村
神郷村
船木村
泉川村
角野村
中萩村
大生院村
飯岡村
大町村
神拝村
神戸村
加茂村
橘村
氷見村
大保木村

これらの町村は、その後の合併や市制施行を経て、現在の新居浜市と西条市を構成するに至っています。

参考文献

角川日本地名大辞典編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 38 愛媛県』角川書店、1981年
旧高旧領取調帳データベース

新居郡は、その歴史の中で様々な変遷を遂げましたが、その遺産は現在の新居浜市と西条市にしっかりと受け継がれています。

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