正福寺 (幸手市)

正福寺の概要

正福寺は、埼玉県幸手市に所在する真言宗智山派の寺院です。正確な創建年代は不明ですが、記録によれば1511年（永正8年）に秀宥によって中興されたとされており、それ以前から存在していたと考えられています。

歴史

江戸時代に入ると、1648年（慶安元年）には江戸幕府から寺領13石を賜り、49もの末寺を有する寺院として隆盛を極めました。しかし、1863年（文久3年）には暴風雨による甚大な被害を受け、多くの寺宝が失われたり、水没するなどの被害に見舞われました。特に、当時本尊として安置されていた不動明王像もこの災害で失われてしまいました。

その後、明治初期の神仏分離の動きの中で、蔵前神社に安置されていた不動明王像の移転先を探していたところ、正福寺がその像を引き取ることとなりました。これは災害で本尊を失っていた正福寺にとっては非常に大きな出来事であり、現在もこの不動明王像が正福寺の本尊として祀られています。

文化財

正福寺の境内には、埼玉県指定有形文化財である「幸手義賑窮餓之碑」が建立されています。この碑は、1783年（天明3年）の浅間山大噴火を契機として発生した天明の大飢饉の際、地域の貧民を救済するために尽力した21人の名主たちの功績を称えるために建てられました。代官頭であった伊奈忠尊が彼らの善行を褒賞し、その記録を後世に伝えるために顕彰碑を設けたのです。この碑は、当時の人々の困窮と、それに対する地域社会の連帯を示す貴重な文化財となっています。

交通アクセス

正福寺へは、東武日光線の幸手駅から徒歩で約14分の距離に位置しています。

参考資料

この文章を作成するにあたり、以下の資料を参考にしました。

敏蔭英三 写真、秋山喜久夫 文『写真紀行 埼玉の寺 Ⅰ』埼玉新聞社、1981年
「内国府間村 正福寺」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ36葛飾郡ノ18、内務省地理局、1884年6月。

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