武宗 (唐)

武宗（ぶそう）は、唐王朝の第18代皇帝であり、穆宗（ぼくそう）の五男として生まれました。初めは潁王（えいおう）に封じられていましたが、文宗（ぶんそう）の崩御後、宦官の仇士良（きゅうしりょう）らの策略によって皇帝に擁立されました。

文宗には実子が早世したため、異母兄である敬宗（けいそう）の末子、李成美（りせいび）を皇太子としていました。しかし、朝廷で勢力を誇っていた仇士良ら宦官勢力が、李成美ではなく李瀍（りせん）を皇太弟に擁立し、李成美は陳王（ちんおう）に封じられ、後に殺害されるという悲劇が起こりました。この擁立劇の裏には、宦官たちの権力争いが背景にあったと考えられています。

武宗は、冷静沈着で明晰な判断力を持つ人物であったと伝えられています。彼は宰相に李徳裕（りとくゆう）を登用し、宦官勢力の抑制や中央集権体制の再建に力を注ぎました。しかし、道士である趙帰真（ちょうきしん）を深く信任するようになり、道教に傾倒するあまり、仏教を徹底的に弾圧する「会昌の廃仏（かいしょうのはいぶつ）」と呼ばれる政策を実行しました。

この廃仏政策は、当時の寺院が広大な荘園を所有しながら免税されていたという経済的な背景や、銅銭不足の問題も絡み合っていました。寺院は大量の銅を使い仏像や仏具を製造していたため、銅不足に拍車をかけていたという側面もあり、必ずしも宗教的な理由だけではなく、経済政策としての側面も持ち合わせていたと言われています。また、皇位を争った叔父の李怡（りい、後の宣宗）が自身の身を守るために仏教を利用したことが、武宗の仏教攻撃の一因になったという説もあります。

会昌6年（846年）、武宗は丹薬による中毒が原因で33歳の若さで崩御しました。死の直前には自ら「炎」と改名したと伝えられています。彼の治世は、唐朝の歴史において、政治的な動きや宗教政策が複雑に絡み合った時期として語り継がれています。

宗室

武宗の后妃は全て側室であり、以下の女性たちが記録されています。

淑妃（しゅくひ）王氏
徳妃（とくひ）劉氏
賢妃（けんひ）劉氏
賢妃（けんひ）王氏
昭儀（しょうぎ）呉氏
昭儀（しょうぎ）沈氏
修儀（しゅうぎ）董氏
婕妤（しょうよ）張氏
婕妤（しょうよ）趙氏
才人（さいじん）孟氏

男子としては、以下の5人の王子がいました。

杞王（きおう）李峻（りしゅん）
益王（えきおう）李峴（りけん）
兗王（えんおう）李岐（りき）
徳王（とくおう）李嶧（りえき）
昌王（しょうおう）李嵯（りさ）

登場作品

武宗を題材にした作品として、以下があります。

「宮心計」（2009年、香港ドラマ、日本未公開、演：蕭正楠）

関連項目

三武一宗の法難 - 会昌の廃仏
『後西遊記』 - 武宗の死の裏事情が語られる。

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