武家屋敷通り (南九州市)

武家屋敷通りの歴史と景観

鹿児島県南九州市知覧町にある武家屋敷通りは、その名の通り、江戸時代の武士の邸宅が立ち並ぶ歴史的な通りです。この通りは、南九州市道城馬場線、通称・武家屋敷通り線として知られ、約0.8kmにわたって東西に延びています。

知覧は「薩摩の小京都」とも呼ばれ、その理由は、薩摩藩が領地を外城という地区に分け、武士を分散配置したことにあります。知覧もその一つで、特に佐多久達の時代には島津姓の使用と私領地化が許され、城郭のような区画が形成されました。現在残る武家屋敷群は、島津久峰の時代に整備されたもので、折れ曲がった本馬場通り沿いに、石垣と大刈り込みの生垣が連なる様子は、当時の面影を今に伝えています。1981年には、この一帯が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

通り沿いには、国の名勝に指定された武家屋敷の庭園が点在し、石垣とイヌマキの生垣が美しい景観を作り出しています。これらの庭園は、母ヶ岳を借景とし、1700年代から1800年代初めに作られたとされ、枯山水様式を中心に、琉球庭園の影響も見られると指摘されています。

地域一体となった景観保全

知覧町は、南九州市になる以前から、行政と地域住民が一体となって、歴史的な建造物や景観の保全に力を入れてきました。武家屋敷通り線では、電柱の移設や排水施設の地下埋設が行われ、路面舗装も周辺の景観に調和するように、シラス色と呼ばれる特殊な舗装が施されています。通りの東端にある麓川にかかる橋も、地元産の石材を使用し、景観との一体感を意識したデザインとなっています。

文化財としての価値

武家屋敷通りとその周辺は、文化財としても高い価値を持っています。1975年には知覧武家屋敷庭園保存会が発足し、1981年には7つの庭園が「知覧麓庭園」として国の名勝に指定されました。これは、鹿児島県内では仙巌園に次ぐ2番目の指定となります。同年には、武家屋敷群が国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されました。

1986年には「日本の道100選」に選ばれ、「手づくり郷土賞」（人と風土が育てた家並）も受賞しています。また、通り沿いを流れる「清流溝と池」も、「手づくり郷土賞」（やすらぎとうるおいのある歩道）を受賞しており、武家屋敷通り全体が、歴史と文化が息づく空間として評価されています。

訪れる人を魅了する歴史と美

武家屋敷通りは、その歴史的な価値だけでなく、美しい景観も魅力です。通りを歩けば、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。石垣や生垣、そして美しい庭園が織りなす風景は、訪れる人々を魅了し、忘れられない思い出となるでしょう。

名勝指定されている主な庭園

西郷恵一郎庭園
平山克己庭園
平山亮一庭園
佐多美舟庭園
佐多民子庭園
佐多直忠庭園
森重堅庭園
その他、平山ソヨ庭園など

これらの庭園は、それぞれに趣が異なり、見比べるのも楽しみの一つです。武家屋敷通りを訪れる際には、ぜひ庭園にも足を運んで、その美しさを堪能してください。

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