武川寛海

武川寛海（たけかわ ひろみ）

プロフィール

武川寛海は、1914年2月22日に東京で生まれ、1992年5月2日に心不全のため浦和市で亡くなりました。日本の音楽評論家、ベートーヴェン研究家として著名であり、音楽之友社『音楽芸術』編集長を務めたことでも知られています。

生涯

判事であった父、武川佳海の息子として東京に生を受けました。父の転勤により、福島県、静岡県、栃木県と各地を転々としながら成長。栃木県立栃木中学校（旧制）から成蹊高等学校（旧制）を経て、1938年3月に東京帝国大学文学部美学科を卒業しました。大学在学中には、作曲家の下總皖一に師事し、音楽への造詣を深めています。

1938年4月、日本コロムビア株式会社に入社し、文芸部でディレクターとして勤務。1943年に同社を退社し、満洲（現在の中国東北部）の新京へ渡り、株式会社満洲映画協会で音楽監督を務めました。1946年8月に満洲から引き揚げ、同年10月には音楽之友社に入社。『音楽芸術』や『音楽之友』の編集長を歴任し、日本の音楽文化の発展に尽力しました。

1951年にはラジオ東京（現在のTBSラジオ）に入社し、編成局音楽部長として活躍。1958年には上野学園大学の専任教授に就任し、後進の育成にも力を注ぎました。1968年には文部省の委嘱により教科用図書検定調査審議会委員を務め、教育分野にも貢献。1969年にTBSを定年退職後も、1987年に上野学園大学を定年退職するまで教鞭をとり続け、名誉教授の称号を得ています。1992年、心不全のため、78歳で生涯を閉じました。

人物

お酒を愛し、神道を信仰していました。

家族

三男は、人気バンド「ゴダイゴ」のメインボーカルであるタケカワユキヒデ（本名：武川行秀）です。また、孫には、タレントとして活躍している武川アイがいます。

著書

武川寛海は、音楽に関する幅広いテーマで多くの著書を執筆しました。その中でも特にベートーヴェンに関する研究は高く評価されており、彼の著作は、音楽愛好家だけでなく、研究者にとっても貴重な資料となっています。

主な著書には以下のようなものがあります。

『音楽会 音楽ガイド』（音楽之友社、1956年）
『レコード』（朝日新聞社、1956年）
『ハイドンからシヨスタコーヴィッチまでの交響曲』（音楽之友社、1957年）
『ヨハン・シュトラウス』（音楽之友社、1960年）
『協奏曲の歴史と名曲』（音楽之友社、1965年）
『人間ベートーヴェン』（講談社、1970年）
『逸話で綴る音楽家物語』（玉川大学出版部、1972年）
『音楽史の休日 見落されたエピソード』（音楽之友社、1972-74年）
『音楽史とっておきの話』（音楽之友社、1976年）
『「第九」のすべて』（日本放送出版協会、1977年）
『ベートーヴェンの虚像をはぐ』（音楽之友社、1977年）
『名曲の生まれたとき』（共同通信社、1981年）
『音楽家たちの意外な話』（音楽之友社、1982年）
『音楽史とっておきの話 続』（音楽之友社、1982年）
『音楽科がすきになる5分間話』（黎明書房、1983年）
『音楽史とくに知らなくてもいい話』（中央公論社、1983年）
『音楽史ウソのようなホントの話』（音楽之友社、1989年）
『エピソードで綴るモーツァルトの生涯 ちょっと意外な話37話』（講談社、1991年）
『名曲意外史』（毎日新聞社、1992年）
『音楽エピソード面白全集 ものしり瓢箪』（芸術現代社、1993年）
『おもしろすぎる音楽5分間話』（黎明書房、2012年）

翻訳

また、海外の音楽理論書や音楽史に関する書籍の翻訳も多く手がけ、日本の音楽文化の発展に貢献しました。

主な翻訳書には以下のようなものがあります。

エルンスト・トッホ『旋律学』（共益商社書店、1939年）
パウル・ベッカー『ベートーヴェンよりマーラーまでの交響曲』（管楽研究会、1942年）
パウル・ベッカー『ドイツの音楽生活 社会篇』（楽苑社、1943年）
グスタフ・ノッテボーム『ベートーヴェニアーナ 創作記録と手記の考証』（音楽之友社、1951年）
『ホフマン音楽小説集』（音楽之友社、1951年）
『オペラ対訳シリーズ 第17 魔弾の射手』（音楽之友社、1970年）
ロベール・ボリー編『ベートーヴェン 目でみるドキュメント』（音楽之友社、1970年）
エディッタ・シュテルバ, リヒャルト・シュテルバ『ベートーヴェンとその甥 人間関係の研究』（音楽之友社、1970年）
ヨーゼフ・ハインツ・アイブル編『モーツァルト年譜』（音楽之友社、1974年）
アルベルト・クリストフ・ディース著 ホルスト・ゼーガー編『ハイドン 伝記的報告』（音楽之友社、1978年）
『あの世の楽聖たち 音楽家の書いた音楽小説集』（芸術現代社、1979年）

まとめ

武川寛海は、音楽評論家、ベートーヴェン研究家、そして教育者として、多岐にわたる分野で活躍し、日本の音楽文化に多大な貢献を果たしました。彼の情熱と知識は、後世にまで語り継がれるでしょう。

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