武田ランダムハウスジャパン

株式会社武田ランダムハウスジャパン：日米出版界の試みと終焉

株式会社武田ランダムハウスジャパンは、2003年から2012年まで存在した日本の出版社です。ランダムハウスと講談社の合弁会社として設立され、日米両国の作家を発掘し、作品を両国で出版するという、意欲的な試みを展開しました。

設立と初期の活動

2003年、ランダムハウスと講談社の合弁事業として誕生した同社は、当初「株式会社ランダムハウス講談社」という社名でした。日米の出版文化交流を促進するという理念のもと、新しい才能の発掘と育成に力を入れていました。その取り組みの一環として、2006年には「ランダムハウス講談社新人賞」を創設。ジャンルを問わず広く応募を受け付け、受賞作品は日本とアメリカで刊行されるという、国際的な視点を持った新人賞でした。しかしながら、この賞は2回で終了しています。

同社は、さまざまなジャンルの書籍を出版しました。中でも2007年に出版されたアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領の『不都合な真実』は、日本における地球温暖化問題への関心を高める上で重要な役割を果たしたと言われています。この書籍は、環境問題に関する社会的な議論を活発化させる契機となりました。

MBOと社名変更

2010年、ランダムハウスと講談社の提携が解消されました。これに伴い、当時の社長である武田雄二氏が、ランダムハウスと講談社が保有していた株式を買い取るマネジメント・バイアウト（MBO）を実施。同年4月には、社名を現在の「株式会社武田ランダムハウスジャパン」に変更しました。

倒産

しかし、経営はその後も苦戦を強いられ、2012年12月12日、東京地方裁判所から破産手続開始決定を受け、倒産しました。負債総額は約9億2600万円にのぼったとされています。

主な出版物

武田ランダムハウスジャパンは、多様なジャンルの書籍を出版していました。

政治・経済：岡田克也氏の『岡田語り。』、梶井厚志氏の『ヒーローでわかる日本経済』、奥山清行氏の『ムーンショット デザイン幸福論』、石丸幸人氏の『借金返済の裏ワザ 多重債務地獄から抜け出せる!』など
実用書：千宗室氏の『千玄室が語る茶の楽しみ』、横山剣氏の『やる気のバイブル』、つるの剛士氏の『つるっつるの脳みそ 幸福な遺伝子』『つるのひと声 わくわくライフ☆ポジティブ大作戦』など
エンターテイメント：ウェイン・ルーニー氏の自伝『悪童自伝 物語は始まったばかり』、ローラ・チャイルズ、クレオ・コイル、フランセス・ファイフィールド、マット・ベイノン・リースといった海外作家の小説、趙英男氏の『殴り殺される覚悟で書いた親日宣言』、少年少女の『酒と泪と少年少女』、ノッチの『ノッチの愛妻日記 僕の嫁は名プロデューサー』、小島てるみ氏の『ヘルマフロディテの体温』、慎武宏氏の『祖国と母国とフットボール』、エリザベス・ギルバート氏の『食べて、祈って、恋をして』など
その他：U字工事の『レッツゴー!栃木 U字工事の熱血お国自慢』、松村邦洋氏の『武将のボヤキ 松村邦洋のお笑い裏日本史』など

これらの書籍は、それぞれの分野において一定の評価を得ていました。

翻訳ミスと回収

2011年6月に刊行されたウォルター・アイザックソン著『アインシュタイン その生涯と宇宙』（下巻）では、翻訳に多数の誤りが発見されました。これにより、書店と既に購入した読者から書籍が回収される事態となりました。この事件は、同社の信用を失墜させる一因となったと考えられます。

結論

株式会社武田ランダムハウスジャパンは、日米の出版文化交流という野心的な目標を掲げ、様々なジャンルの書籍を出版しました。しかし、経営環境の変化や、内部的な問題も重なり、わずか10年弱で倒産という結果を迎えることとなりました。同社の歴史は、出版業界の厳しい競争環境と、国際的な連携の難しさを示す一つの事例と言えるでしょう。

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