武田信玄 (小説)

武田信玄

『武田信玄』は、新田次郎が執筆した歴史小説であり、同作品は1965年から1973年にかけて『歴史読本』に連載されていました。全4巻からなるこの物語は、武田信玄の激動の生涯を鮮やかに描写しており、特に信玄の父・信虎の追放から始まり、彼の死去までの過程が詳細に描かれています。この作品は、第8回吉川英治文学賞を受賞するなど、その評価も高く、文藝春秋からは1969年から1973年にかけて刊行されました。さらに、1988年にはNHK大河ドラマ『武田信玄』の原作となり、広く知られることとなります。

あらすじ

物語は、父信虎を駿河に追放した武田晴信（後の信玄）が甲斐の領主として独立を果たすところから始まります。彼は、最初に諏訪、その後信濃の平定を行い、宿敵である上杉謙信と川中島での戦いに臨む運命にあります。また、信玄は単なる武将にとどまらず、金山の発掘などを通じて政治家としての手腕も発揮します。しかし、病と戦う信玄は徳川家康を打ち破り、上洛を目前にしますが、その途中で命を落としてしまいます。物語は、彼の死後3年経った葬儀の様子で締めくくられます。

詳細な内容

作中では、作者の新田次郎が元気象庁職員であったことを活かし、川中島の戦いなどにおける天候に着目した独自の考証が展開されています。このため、信玄の戦の環境的要素についてもリアルに描かれることとなりました。信玄の死因については諸説あり、作中では信頼されていた御宿監物書状に基づいて肺結核説が採用されています。信玄が持病として結核を抱えている様子が描かれているものの、その後の武田氏の研究ではこの文書の信憑性が疑問視され、胃癌説が有力視されています。作者もその見解の相違については反省の弁を述べています。

その他にも、物語には戦国時代における佐渡の金山についての興味深い点が含まれています。実際のところ、佐渡の金山は戦国時代にはまだ発見されていなかったため、作中の金山が上杉謙信のものとして描かれていることには批判の声がありますが、作者は「秘密にしていたから資料が残らなかった」と主張し、誤りを認めていません。しかし、戦国時代の佐渡は本間氏の統治下にあり、上杉氏はその領土を持っていなかったため、この点からも物語には一定の歴史的整合性に欠ける要素があります。

また、信玄と三条夫人との関係については、必ずしも良好ではなく描かれ、義信の最期については病死説が採用されています。新田次郎 の武田信玄の物語は、歴史を背景にした感情豊かな描写が特徴で、多くの読者に感銘を与え続けています。

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