武田信顕

武田信顕の生涯

武田信顕（たけだ のぶあき）は、戦国時代の武将で、多くの歴史の波に翻弄されながら壮絶な人生を送った人物です。彼は甲斐国の元国主、武田信虎の庶子であり、これにより武田信玄の異母弟であるともいわれています。幼少期には信玄とその家臣の影響を受け、駿河国に追放されていた父の信虎のもとで養育された可能性が高いとされています。

信顕が歴史の表舞台に登場するのは弘治2年（1556年）のことで、三好長慶の計略により大和国から招かれ、脇城の城主となります。当時、三好長慶は脇城を修築し、長い間そのエリアの防衛を担当していた三好兼則から、後任として信顕を選びました。信顕はその後も三好長治に仕官し、職務を全うしました。

脇城の防衛と長宗我部との対立

戦国時代は、さまざまな勢力が力を争い、信顕も例外ではありませんでした。天正6年（1578年）には、隣城の三好康俊と共に、長宗我部元親の侵攻に対して降伏を余儀なくされます。しかし、織田信長の四国侵攻が始まると、再び三好家に寝返ることになります。

本能寺の変によって織田軍の援助が断たれると、信顕は再び長宗我部の脅威に直面します。1582年8月17日、長宗我部軍が脇城を襲撃します。信顕の城兵は約500人であったのに対し、長宗我部軍は3000人以上、一説には1万2千人とも言われる大軍でした。信顕は猛攻に耐えるも、5日間後に城を脱出せざるを得なくなりました。

幸運の逃避行と最期の運命

信顕は逃げ延びるも、阿讃山脈を越えて讃岐国に逃れようとしました。しかし、長宗我部軍の追撃が激しく、最終的には讃岐国大川郡にて戦死しました。彼の遺体は家臣の大塚善太夫によって、近くの東昭寺に埋葬されました。その際、法名は「恵命院仙室等庵居士」と名付けられています。

信顕には武田信定という子がいましたが、父と別れて城に残っており、16歳で自害して果てたと伝えられています。信顕の家系は後に阿波に根を下ろすことになりますが、信顕自身の壮絶な人生の終わりは、戦国時代の混乱を象徴する出来事であったといえるでしょう。

信顕の一生は、名門武田家の運命を背負い、また異なる勢力との闘争の中で如何にして生き延び、最終的には戦乱に飲まれてしまったかを物語っています。彼の生涯からは、多くの教訓と共に、戦国時代の武将たちの厳しい現実が浮かび上がります。

もう一度検索