脇城

脇城：阿波九城の一つ、激動の戦国時代を生き抜いた城

徳島県美馬市脇町に存在した脇城は、別名虎伏城とも呼ばれ、阿波九城に数えられる重要な城郭です。戦国時代の動乱期、幾多の戦いと城主の変遷を経験し、その歴史はドラマチックな展開をみせています。

築城から三好氏支配下へ

脇城の起源は、戦国時代に脇権守という人物が館を構えたことに遡ると伝えられています。天文2年（1533年）、三好長慶によって本格的な城が築かれ、三河守兼則が城主を務めました。当時、西方の岩倉城と連携して阿波西部の防衛を担い、両城は阿波国の重要な拠点として機能していました。規模は岩倉城の方がやや大きかったとされています。その後、三好家家臣で武田信玄の異母弟ともいわれる武田信顕が城主となり、脇城の歴史は新たな段階に入ります。

長宗我部氏との攻防

天正7年（1579年）、長宗我部元親が脇城を攻め寄せました。この時、武田信顕は岩倉城の三好好俊と共に長宗我部氏に寝返るという驚きの行動に出ます。好俊と信顕は巧みな謀略を用いて三好方の軍勢をおびき寄せ、脇城下でこれを壊滅させました。しかし、その後再び三好康長方に属した脇城は、天正10年（1583年）、長宗我部氏の攻勢によって落城。信顕とその子信定は讃岐へ逃れたものの戦死しました。落城後は長宗我部親吉が城を守りましたが、天正13年、羽柴秀吉の四国征伐により、羽柴秀次の軍勢の前に降伏し、開城しました。親吉自身も土佐への帰還途中、土豪の待ち伏せに遭い命を落としました。

蜂須賀氏と脇城、そして廃城へ

阿波国の領主となった蜂須賀家政は、脇城を阿波九城の一つとして位置づけ、特に重視しました。家政は家老格の重臣である稲田植元に1万石を与え、城代として任命しました。稲田氏は城の強化と城下町の整備を行い、脇町は阿波西部の中心地として大きく発展しました。しかし、一国一城令の発布により、寛永15年（1638年）、脇城は廃城の運命を辿ることとなります。

残された遺構と歴史

現在、脇城跡は虎伏山と呼ばれる丘陵地帯にあり、本丸跡は雑木林となっていますが、直径2メートルの井戸や湧き水など、往時の面影を残す遺構が確認できます。また、本丸東側には幅6メートル、深さ4メートル、長さ42メートルに及ぶ空堀や石垣も残っており、かつての城の規模を物語っています。二の丸、三の丸跡は畑地となっているものの、城下町の繁栄を今に伝える「うだつの町並み」は、脇城の歴史と文化を象徴的に示しています。 城址周辺には、城主稲田氏の菩提寺である貞真寺があり、かつて城主の館があった場所も現在では宅地となっています。脇城は、その歴史的意義と遺構から、戦国時代の阿波国の歴史を知る上で貴重な史跡と言えます。

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