武者所

武者所（むしゃどころ）の概要

武者所は、内裏や院御所の警備を担う令外官であり、その成立は平安時代に遡ることができます。最初の記録は、寛和元年（985年）に円融上皇の御所に設けられた院武者所で、ここに10名が任命されました。当初から、武者所は治安維持や上皇の警備を担当し、しばしば天皇在位中の滝口の武士が当てられていました。

設立の背景

その後、上皇の院庁が始まった時期に、院蔵人所や院御随身所とともに武者所を設置する慣例が定まりました。武者所の構成員の定員は10名から30名と不定で、散位の者も多く、任務を評価した結果によって武官に任じられることもありました。

白河上皇が北面武士を設置した際、武者所の役割は次第に縮小し、院政の衰退と共にその存在は消滅していきます。しかし、南北朝時代に後醍醐天皇の建武政権が成立すると、武者所が復活し、窪所とともに内裏の警備や京都の治安維持に貢献しました。

武者所と窪所の役割

武者所の機能として、窪所が主に朝廷の中心地を警備するのに対し、武者所は洛中及びその周辺の治安維持を担当していました。天皇に近侍する構成員は、両方の組織で活動する者もありました。新田義貞がこの時期に頭人を務め、後醍醐天皇の近衛隊としての役割を果たしたことは特筆されます。義貞を頭人とする背景については、足利尊氏が支援したとも言われており、複雑な政治情勢の中での出来事でした。

新田氏と武者所

建武政権の混乱期、特に中先代の乱以降、足利尊氏が政権に背くと、新田氏はその対抗勢力として位置づけられるようになりました。延元元年（建武4年/1336年）の結番交名には、新田氏の一族が多く名を連ねており、その重要性が窺えます。この時、武者所の編成は全6番で構成され、各番には通常11名が配置されます。特筆すべきは、この時期は建武の乱が真っ最中であり、足利方の人材は含まれない点です。

武者所の構成例

このような状況において、延元元年（1336年）の武者所の構成は、歴史的な資料に基づいて詳細に知ることができます。まだ不明確な点も多いですが、必ずしも単純に一つの勢力が優位だったわけではなく、権力の争いの中でさまざまな動きが見られました。例えば、一色頼行は建武元年（1334年）には武者所に属していたが、その後自らの立場を変えるなど、流動的な動きが続いたことが記録されています。

余波と歴史的意義

武者所は、南朝・北朝それぞれの時代に存在し続け、その後の日本の治安維持の仕組みに影響を与えました。時代背景を理解することで、武者所がどのように変化し、また社会に寄与したのかが見えてきます。今後の研究においても、その役割と影響について詳しく調査されることが期待されます。武者所は、単なる警備機関を超え、時代の波に影響を受けながらも重要な機能を果たし続けた存在だったのです。

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