死との約束 (テレビドラマ)

ドラマ『死との約束』の概要

概要

『死との約束』は、2021年3月6日にフジテレビ系列の『土曜プレミアム』で放送されたスペシャルテレビドラマです。この作品は、アガサ・クリスティによる1938年の長編小説を原作としており、舞台を日本の熊野古道に移し、時代設定を昭和30年代に変更しています。物語の中心となるのは、主人公の勝呂武尊が、彼が宿泊していた黒門ホテルで起こる謎の殺人事件の真相を解明しようと奮闘する様子です。

制作背景

このドラマは、脚本家の三谷幸喜と狂言師の野村萬斎がタッグを組んだシリーズの第3弾にあたります。過去には『オリエント急行殺人事件』と『黒井戸殺し』が制作されており、著名なミステリー作品を日本の文脈に落とし込む試みが続いています。三谷は、「死との約束は、アガサ・クリスティーの隠れた傑作です。特にポワロ物の中で最も気に入っている作品です」とコメントし、原作に対する深い愛情が伺えます。

ドラマは、制作の過程で原作に忠実でありながら、視聴者に意外性をもたらすための改変も行われています。特に登場人物の設定にミスリードの要素を加えることで、犯人を予想しにくくする工夫がなされています。撮影は愛知県の蒲郡クラシックホテルを外観として利用し、内部のシーンは東京都内のスタジオで撮影されました。

あらすじ

物語は、熊野古道近くの熊野市にある「黒門ホテル」で、主人公の勝呂武尊が休暇を過ごしているところから始まります。彼は、ラウンジで医師の沙羅絹子や本堂家の人々と出会います。本堂家は任期の長い富裕層で、家族の絆や内部の圧力が浮き彫りになります。

その晩、ホテル内で口論するカップルの発言、「分からないのか、こうなったらもう殺すしかないんだ」という言葉が、勝呂の脳裏に残ります。家族の中でも特に支配的な本堂夫人に対する沙羅の苛立ちが高まり、夫人と接触する試みがこの家族間の緊迫した関係に波紋を呼びます。

勝呂は、政治家である古い知人の上杉穂波と再会し、彼の編集者である飛鳥ハナとの間に微妙な関係が築かれます。勝呂は、上杉の煽りによって山道で怪我をし、彼の計らいにより熊野古道の探訪に出かけることになります。

探訪中、本堂夫人が一人でベンチに残るよう命じられ、戻った際には彼女がすでに亡くなっていることが発見されます。この突如の死により、勝呂は川張大作署長から捜査の協力を求められます。彼は、集まった家族のアリバイや動機を調査し、巧妙に推理を進めることで、次第に事件の全容に迫ります。

キャスト

主人公の勝呂武尊を演じるのは、野村萬斎です。彼は自らを世界一の名探偵と称し、クリスティの原作では重要な役割を担っていたエルキュール・ポアロの日本版とも言えるキャラクターを演じています。また、母親役を演じる松坂慶子や、家族の役割を演じる他のキャストも個性豊かで、物語の緊張感を高めています。

全体的にこのドラマは、探偵小説のファンにも新たな視点で楽しんでもらえる作品に仕上がっています。文化の異なる場所にコントラストすることで、クリスティ作品の魅力を新たに引き出す努力が見受けられます。

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