死ぬまで君を離さない

死ぬまで君を離さない（シングル）

『死ぬまで君を離さない』は、シンガーソングライターKANが1992年10月22日に発表した、キャリア通算13枚目となるシングルである。収録曲はすべてKAN自身が作詞・作曲を手掛け、編曲は小林信吾とKANの共同名義となっている。

収録曲

1. 死ぬまで君を離さない
本シングルの表題曲。ミディアムテンポのラブソングとして、多くのリスナーに親しまれた。テレビ東京系列で放送されていた人気紀行番組『いい旅・夢気分』の、1992年10月から12月までのエンディングテーマとして採用された。

楽曲のミュージックビデオは、主にライブのリハーサル風景を捉えたパフォーマンス映像を中心に構成されている。その中に、大量のテレビが爆発するシーンや、古びた建物が無残に崩れ落ちる様子などが、モノクロ（一部カラー）映像として断片的に挿入されているのが特徴的である。この対比的な映像表現が、楽曲の世界観に深みを与えている。

2. KANのChristmas Song
カップリングに収録されたこの楽曲は、異色のアカペラ主体によるクリスマスソングである。ケンタッキー・フライドチキンのクリスマスCMソングとして使用された。

この楽曲の誕生には、KANが敬愛してやまないアーティスト、ビリー・ジョエルの存在が大きく関わっている。ビリー・ジョエルのアルバム『イノセント・マン』に収録されているアカペラ曲「ロンゲスト・タイム」に強く影響を受け、それを模倣する形で作曲された。オリジナルの「ロンゲスト・タイム」がビリー・ジョエル自身が一人で多重録音によってすべてのアカペラパートを歌い分けているのに対し、『KANのChristmas Song』では、KAN本人に加え、ジョイ・マッコイ、ウォーネル・ジョーンズという3人の声によって多層的なアカペラサウンドが創り出されている点が異なる。

実はこの楽曲、KANがデビューして間もない1987年には既に原型が完成していた。しかし、ライブでは1989年と1990年の12月に、大阪MIDシアターで行われたコンサートでのみ披露されるに留まり、長らく公式なCD音源としては発表されず、シングルのカップリングとしてようやく日の目を見たという経緯を持つ。CD化のタイミングを逃し続けていた楽曲が、満を持して収録された形である。

楽曲タイトルに自身のアーティスト名「KAN」を冠した理由について、KANは後に語っている。それは、「自分がこの世を去った後でも、いつかこの曲がクリスマスの定番曲、スタンダード・ナンバーとして歌い継がれてほしい」という未来への壮大な願いと、「発表当時、これが自分にとって最初で最後の、唯一のクリスマスソングである」という強い決意の両方が込められていたという。しかし、その言葉とは裏腹に、それから7年後の1999年には、二作目となるクリスマスソング『今年もこうして二人でクリスマスを祝う』を発表する。これについても彼は「このメロディーには、どうしてもこの歌詞しかピッタリこなかったから、仕方が無かった」と、メロディーとの出会いによる偶然性を語っている。

そして、KANが2023年11月12日に逝去したことを受け、翌月の2023年12月12日には、彼を深くリスペクトする7組の豪華アーティストたちが集結。「KAN with His Friends」名義で、この「KANのChristmas Song」を追悼カバーするシングル『KANのChristmas Song 2023』がリリースされた。参加アーティストは、aiko、トータス松本（ウルフルズ）、スキマスイッチ、根本要（スターダストレビュー）、秦基博、馬場俊英、槇原敬之という、KANと縁の深い面々である。このカバーリリースは、時を超えて多くの人々に愛され、影響を与え続けている本楽曲の普遍的な魅力と、KANという音楽家の存在の大きさを改めて示す出来事となった。

3. 死ぬまで君を離さない（オリジナル・カラオケ）
表題曲のインストゥルメンタルバージョンである。

『死ぬまで君を離さない』は、KANの代表的なラブソングと、彼の音楽的ルーツや遊び心、そして未来への願いが詰まったユニークなカップリング曲を併せ持つ、彼の多面的な音楽性が現れたシングルと言えるだろう。

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