死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集

『死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』について

『死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』は、漫画家・荒木飛呂彦による短編作品集です。1999年11月24日に集英社から「SCオールマン愛蔵版」として単行本が刊行され、後に文庫版やリミックス版も発売されました。この作品集には、表題作の『死刑執行中脱獄進行中』を含む4つの短編が収録されています。

収録作品

収録されているのは以下の4作品です。

死刑執行中脱獄進行中：死刑囚が処刑室と化した牢獄から脱獄を試みるサスペンス。
ドルチ 〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜：遭難したヨット上で、人間と猫が生き残りをかけて対峙する物語。
岸辺露伴は動かない 〜エピソード16:懺悔室〜：『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する人気キャラクター、岸辺露伴を主人公としたスピンオフ。
デッドマンズQ：同じく『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する吉良吉影を思わせる幽霊が主人公の物語。

これらの作品は、荒木飛呂彦が短編作品を執筆する際の考え方を4つのタイプに分類したうちの、いずれかに該当するとされています。具体的には、

A：登場人物の行動や感情を深く掘り下げた作品
B：短い時間の中で人生やテーマを象徴的に描いた作品
C：ナンセンスやサスペンス、エロ、グロなどを追求した作品
D：日記やエッセイのような作品

となっています。

各作品の詳細

死刑執行中脱獄進行中

『スーパージャンプ』に掲載された表題作は、死刑囚が収監された部屋が実は処刑室であるという設定で、死刑執行を回避しようとする囚人と、それを阻止しようとする監獄側の攻防を描いたサスペンスです。作者自身も「ひたすらサスペンスを描くために描いた」と語っています。作品タイプはCに分類されます。

物語は、殺人罪で死刑判決を受けた囚人27号が、まるでホテルのような牢獄に収容されるところから始まります。しかし、部屋の中には様々な罠が仕掛けられており、囚人27号は次第にこの部屋がただの牢獄ではないことに気づきます。彼は脱獄を試みますが、その度に仕掛けられた罠によって負傷し、最終的に部屋が処刑室であることを悟ります。

ドルチ 〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜

『オールマン』に掲載されたこの作品は、転覆したヨットという閉鎖空間で、一級建築士の愛子雅吾と飼い猫のドルチが生き残りをかけて対立する物語です。作者は、この作品で猫が登場するのは担当編集者が猫好きであることへの皮肉だと述べています。作品タイプはBに分類されます。

遭難後、食料や水が尽きた状況で、雅吾はドルチを食べることを考え始めます。物語の終盤では、ドルチが人語を話すなど、シュールな展開も描かれます。

岸辺露伴は動かない 〜エピソード16:懺悔室〜

『週刊少年ジャンプ』に掲載されたこの作品は、『ジョジョの奇妙な冒険』の登場人物である岸辺露伴を主人公としたスピンオフシリーズの第一作です。物語は、露伴が懺悔室で体験する奇妙な出来事を描いています。作品タイプはBに分類されます。

デッドマンズQ

『オールマン』に掲載された全3話の短編で、『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する吉良吉影を思わせる幽霊が主人公です。彼は記憶を失いながらも殺し屋として活動しています。この作品には、後の『ジョジョの奇妙な冒険 Part6』に通じる要素も見られます。作品タイプはAに分類されます。

物語は、尼僧からの依頼で「屋敷の幽霊」に住む者を殺害することになった幽霊の吉良が、S市杜王区を訪れるところから始まります。彼は自身の過去の記憶を失っているものの、殺し屋としての能力は健在です。しかし、幽霊ゆえの制約も多く、思うように殺害を遂行できないことに苛立ちを感じています。

舞台化

2015年には、本作を原作とした舞台『死刑執行中脱獄進行中』が上演されました。主演は森山未來、構成・演出・振付は長谷川寧が担当し、表題作と『ドルチ 〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜』を組み合わせた内容となっています。これは、荒木飛呂彦作品としては初の舞台化作品です。

まとめ

『死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』は、荒木飛呂彦の独特な世界観と、多彩なジャンルを横断する表現力が際立つ作品集です。ジョジョファンはもちろん、幅広い読者が楽しめる内容となっています。

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