残月

残月（ざんげつ）について

残月（ざんげつ）は、地歌の一曲であり、特に手事物として知られています。この作品は、作曲家である峰崎勾当によって作られました。三絃の調弦は本調子から始まり、後半の歌で二上りに転じます。しかし、さまざまな流派によって独自の合奏用の箏の手付が行われており、特に低平調子のものが多く存在しますが、半雲井調子の作品も見られます。一般的に、箏曲の中では生田流に属する楽曲ですが、明治以降には山田流にも取り入れられ、そのレパートリーの一部として定着しています。また、三絃の替手も数多く伝わっており、三絃本手の独奏以外にも、三曲合奏や三絃本手替手合奏など、様々な形態で演奏されています。

曲の構成

この曲は、前弾、前唄、手事五段、後唄という4つのパートから構成されています。京風の手事物が登場する以前、大坂で生まれた手事物の一曲とも位置づけられています。残月は追善曲とされ、シマ三つ物の一部でもあります。前唄の部分では、亡き人に対する深い哀悼の感情が表現されます。一般的な手事物の他の曲と比べると、前唄の中盤からテンポが急上昇して盛り上がるのが通常ですが、本曲では沈痛な緩やかなテンポを持続したまま手事に移行します。

手事に進むと、一転して華やかな技巧が駆使され、故人への音楽的な手向けとしての表現がなされます。しかし、その展開は決して軽やかではなく、深刻な雰囲気が漂っています。曲の進行は高踏的な印象を強め、特に後唄において調弦を変えることで四度上に転調し、明るさを感じさせる部分も見られます。

この『残月』は、峰崎勾当が、大阪の宗右衛門町に住む弟子の松屋という名前の娘が早逝したことを悼んで作曲されたと言われています。地歌の中でも代表的な追善曲として知られ、多くの人々に親しまれています。小説家の内田百閒がこの曲からインスピレーションを受けて著した同名の作品も存在します。

演奏と出典

演奏の例として、都山流尺八手付が挙げられます。この曲は、伝統的な日本の音楽文化の中で、さまざまな演奏スタイルが存在することを象徴しています。

本曲に関する詳細な情報は、以下の資料から得ることができます。例えば、今井通郎の著書『生田山田両流 箏唄全解』や、久保田敏子による『よくわかる箏曲地歌の基礎知識』に詳しく記載されています。これらの文献は、地歌や箏曲に対する理解を深める助けとなるでしょう。

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