地歌

地歌（三味線音楽）

概要

地歌とは、江戸時代に上方を中心に栄えた三味線音楽の一形態であり、地域色豊かな伝統音楽として知られています。この音楽は、視覚障害者の自治組織「当道座」に所属した盲人音楽家たちによって作曲、演奏され、特に「法師唄」とも呼ばれます。

地歌は、江戸時代の初期から存在し、元禄時代には江戸でも演奏されていましたが、しだいに歌舞伎や長唄などのジャンルへと発展していきました。特に、江戸末期には名古屋や九州、西中国地方まで広範囲に愛好され、現在でも全国的に演奏されていますが、東京では特に「地唄舞」の伴奏音楽としてのイメージが強く残っています。

音楽形式と特徴

地歌は、多様な楽曲を持ち、全体に内省的かつデリケートな音楽表現が特徴です。音楽的には、歌と謡による形式が組み合わさり、器楽的要素も強く、特に「手事もの」と呼ばれる形式では、歌の間に器楽的な部分が多く含まれています。

一方、地歌は多様な合奏形式を持ち、三味線、箏、胡弓の合奏が一般的です。例えば、江戸時代の頃からこの三楽器による合奏が盛んになり、互いに影響を与え合いながら発展してきました。

歴史的背景

地歌の起源は、三味線の伝来とほぼ同時期であり、琉球を経由して中国から入ってきた三弦楽器が基盤となっています。当道座の盲人音楽家たちは、古い平曲のスタイルを取り入れながら地歌を発展させ、江戸時代に至るまで多くの名曲が生まれました。

特に、元禄時代には「長歌」と呼ばれる、統一感のある楽曲が増え、さらに音楽的な技巧も向上していきました。その結果、上方からも長歌が作曲され、地歌と歌舞伎が結びつくことになりました。

地歌の楽器と技法

地歌では、独特の三味線と撥（ばち）が使用され、特に音色にこだわった楽器が求められます。地歌独特の三味線は浄瑠璃系のものよりも大きいが、細棹三味線は非常に薄く作られることがあります。また、音域も広く、特に「手事もの」では3オクターヴ以上の音を使うものも多いです。

音楽的表現は、心情や自然の描写が中心で、演者は技巧的な技術を駆使しながら、このある種の繊細な音楽を演出します。「すり」や「打ち指」といった独特の奏法も多く見られ、特殊な技法を駆使して自然音の表現が行われます。

現在の地歌

現代では、地歌は様々なスタイルの中でまとめられ、合奏や独奏を通じて愛好されています。特に、盲人音楽家たちの伝承による重要性が高く、その成長過程や背景は今なお音楽界に影響を与えています。地歌は、伝統的な要素を持ちながらも現代的な演奏形態へと移行しており、多くの人々によって受け継がれています。音楽の多様性と地域性を大切にする地歌は、今後も新たな展開を見せることでしょう。

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