母体保護法指定医師

母体保護法指定医師について

母体保護法指定医師は、特定の法律に従って人工妊娠中絶手術を行うことが許可された医師のことを指します。指定医師は、母体保護法（昭和23年法律156号）第14条の規定に基づき、必要な医療行為を実施する権限を持っています。この役割は非常に重要であり、母体や胎児の健康に配慮した適切な医療提供が求められます。

業務の内容

指定医師は、母体保護法に基づいて人工妊娠中絶手術を行うことができます。ただし、緊急避難的措置として行われる堕胎の場合は、必ずしも指定医師である必要はありません。指定医師には、手術を安全に実施するための知識と技術が求められます。これは、母体の健康を守るとともに、倫理的な観点からも重要な役割を果たしています。

指定のプロセス

指定医師は、民間団体である都道府県医師会によって審査され、指名を受けます。各都道府県で設置された母体保護法指定医師審査委員会がその役を担っています。原則として、医師は複数の施設で指定を兼務することはできず、専門性の保持を図っています。宣言された指定は、2年ごとに更新され、更新の際には所定の講習会に出席することが求められます。また、指定を受けた医師は、毎月10日までにその月の中絶実施数を都道府県知事宛に報告する義務があります。複数の指定医が在籍する医療機関の場合は、施設の長が全体の実施数を集計して報告します。

資格基準

指定医師として働くためには、医師免許を取得してから5年以上の歳月が経過しており、さらに産婦人科での研修を3年以上受けている必要があります。日本産科婦人科学会専門医の資格を持つことも条件とされます。また、研修期間中に20例以上の人工妊娠中絶手術または流産手術の実地指導を受けた履歴が必要で、そのうち10例以上が人工妊娠中絶手術であることが求められます。加えて、資格取得前に所定の講習会に参加することも不可欠です。指定医師が所属する婦人科研修施設には、年間120例以上の分娩数と、50例以上の開腹手術・腹腔鏡手術を行い、緊急対応も可能な体制が求められます。また、主任指導医には日本産科婦人科学会専門医資格が必要です。

中絶実施施設の認定

人工妊娠中絶を行う施設には、必ず母体保護法指定医師が勤務していることが求められます。さらに、施設には原則として入院設備の整備が必要であり、中期中絶を行う場合は特に入院設備の設置が必須です。認定を受けるためには、施設内の人員数や手術室の構造、設備に関する詳細な情報が求められます。

このように、母体保護法指定医師は厳格な基準のもとに指定され、十分な研修を経て、責任ある医療行為を実施することが期待されています。医師としての専門性だけでなく、倫理観や患者に対する配慮も重要な要素となっています。

もう一度検索