毒草を食べてみた

『毒草を食べてみた』は、2000年に文藝春秋から刊行された植松黎による新書です。植物に関するエッセイや翻訳で知られる著者が、43種類の毒草と1種類の菌類（麦角菌）について、その生態やエピソードを綴っています。

本書はタイトルから、危険なアングラ本を連想する読者もいるかもしれません。しかし、内容は意外にも学術的で、毒草に関する知識や歴史、文化的な背景などが丁寧に解説されています。著者が実際に全ての毒草を「食べてみた」わけではなく、試食したことを明言しているのは、ドクウツギ、ヒガンバナ（ヘソビ餅として）、ミトラガイナ(Mitragyna speciosa)の3種類のみです。その他の毒草については、文献や伝承に基づいた情報が紹介されています。

麦角菌が取り上げられている理由は、「イネ科の植物と一心同体の如く寄生するから」とされています。この菌は、かつて麦などに寄生し、中毒症状を引き起こす原因となりました。本書では、麦角菌に関する歴史的な事件や、その毒性について詳しく解説されています。

また、本書は単なる毒草図鑑ではありません。ケシのページでは「ケシほど卑しい目的（アヘンの製造）のためによって作り変えられた植物も無い」と述べ、薬物に対する批判的な視点も示されています。法律で禁止されている植物の栽培を推奨する記述は一切なく、むしろ薬物の危険性を啓発する内容となっています。

『毒草を食べてみた』は、毒草というニッチなテーマを扱いながらも、幅広い読者層に支持された異色のベストセラーです。植物に興味がある人はもちろん、歴史や文化、薬学などに興味がある人にもおすすめです。

書誌情報
* 『毒草を食べてみた』植松 黎 （著）文春新書 （2000年4月） ISBN 4166600990

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