ドクウツギ

ドクウツギ（毒空木）について

ドクウツギは、ドクウツギ科ドクウツギ属に分類される落葉性の低木です。その名前の通り、植物全体に強い毒性を持つことで知られており、トリカブト、ドクゼリと並び、日本三大有毒植物の一つに数えられています。和名の由来は、枝の様子がウツギに似ていること、そして有毒であることに由来します。また、別名として「イチロベエゴロシ」とも呼ばれています。

特徴

ドクウツギは、北海道から本州の近畿地方以東にかけて分布しており、主に山野や河原の礫地、荒れ地などに自生しています。樹高は1メートルから2メートルほどで、雌雄同株です。樹皮は褐色で皮目があり、縦に裂ける特徴があります。枝は褐色または紅褐色で四角い稜があり、冬になると枝先が枯れることが多いです。

葉は長さ6センチメートルから8センチメートルほどの卵状長楕円形で、先端が尖っており、2列に並んで対生します。葉脈は3本が目立ちます。花期は4月から6月で、短い雄花序と長い雌花序が同じ節から出ます。花弁は開花後に肥大し、種子状の果実を包み込むため、見た目には果実のように見えます（これを偽核果といいます）。果期は6月から8月で、果実はブドウのように房状につき、熟すと赤から黒紫色になります。見た目は美味しそうですが、猛毒であるため、絶対に口にしてはいけません。

冬芽は対生し、広卵形で先端がやや尖り、赤褐色をしています。前年枝の葉腋に、雌雄両方の花序の冬芽が多数つきます。冬芽の芽鱗は多数あり、葉痕は半円形で、維管束痕が1個あります。

毒性について

ドクウツギは、株全体に神経毒を含んでいますが、特に果実には猛毒があります。誤って口にすると、激しい痙攣を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。毒成分はコリアミルチン、ツチン、コリアリンなどで、これらが中枢神経を刺激し、嘔吐や全身麻痺などの症状を引き起こします。過去には、ドクウツギの果実を果実酒にして誤飲したことによる中毒事例も報告されています。絶対に口にしないように注意してください。

古赤道分布論

植物学者の前川文夫は、ドクウツギの分布パターンを基に、古赤道分布論を提唱しました。ドクウツギの仲間は、日本では中北部に1種のみが生息していますが、世界に目を向けると、台湾、中国内陸部、ヒマラヤ、ニューギニア、ニュージーランド、南アメリカ、ヨーロッパ西部など、非常に飛び離れた地域に分布しています。前川はこの分布パターンと、西シベリアで発見された化石種を基に、ドクウツギが白亜紀頃には赤道に沿って分布していたと考えました。その後の気候変動により、寒冷化した地域では絶滅したため、現在のような点在した分布になったとされています。

注意点

ドクウツギは美しい姿をしていますが、その一方で非常に危険な植物です。特に山野や河原など、自生地を訪れる際には、ドクウツギの存在を認識し、絶対に触れたり口にしたりしないように注意してください。

参考文献

金田初代、金田洋一郎（写真）『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、185頁。ISBN 978-4-569-79145-6。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、150頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
* 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、215頁。ISBN 4-522-21557-6。

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