比治山スカイウォーク

比治山スカイウォーク：比治山への空中散歩と課題

広島市南区段原に位置する比治山スカイウォークは、比治山へのアクセス向上を目的として建設された、全長約207メートルの歩道橋です。動く歩道やエスカレーターが設置され、バリアフリーにも配慮された設計となっています。特に春には、比治山公園の桜の名所を訪れる多くの観光客にとって、便利なアクセス手段となっています。

スカイウォークは、比治山トンネル東側坑口上空を通過し、広島イースト商業棟（旧広島サティ）と接続しています。透明な屋根が特徴的で、雨天時でも快適に利用できます。約80メートルの動く歩道は、比治山の斜面をスムーズに上り下りすることを可能にし、車椅子でも利用可能です。

この施設は、1998年に段原地区開発の一環として、比治山公園や広島市現代美術館、広島市立まんが図書館への観光客利便性向上のため、広島市によって開通しました。総工事費は17億6千万円にのぼり、そのうち5億3千万円は国の補助金によって賄われました。建設にあたり、1980年代に計画された比治山への博物館建設構想と、それに伴う駐車場不足問題への解決策として、広島イーストの駐車場利用案が検討された経緯があります。

しかし、スカイウォークは建設当初からその存在意義について議論を呼びました。特に平日の利用者は少なく、年間約2千万円にも上る維持管理費の費用対効果が低いという批判が、建設当初から根強くありました。この問題を背景に、2000年代初頭には広島市に対して行政訴訟も起こされました。

2010年には、広島市における事業仕分け「事務事業見直し等検討委員会」で、委員満場一致で廃止が決定されました。しかし、撤去費用問題などをめぐって議論が続いた結果、同年10月に行われた全体会議において、7人の有識者中5人が存続を支持したことから、2011年以降も存続することとなりました。現在も、比治山へのアクセス手段として、そして広島の街並みの特徴的な景観の一部として、機能しています。

比治山スカイウォークは、利便性向上という目的と、維持費の問題という現実の間で揺れ動く、公共事業の複雑さを示す一例と言えるでしょう。その歴史と現状は、公共事業の計画と運営における課題を改めて考えさせるものです。

諸元

総延長：207.4m（うち動く歩道：77m）
高低差：37.5m
全幅：7.08m
標準断面：4.00-5.88m（有効幅員）×3.39m（屋根全高）
設計：八千代エンジニヤリング広島支店
施工：砂原組・錦建設JV

関連情報

JR新井口駅からアルパーク間にも動く歩道があります。
比治山スカイウォークは、アルミニウム建築構造協議会のウェブサイトで紹介されています。
日立製作所の納入実績として、比治山スカイウォークの設備が掲載されています。
広島市のウェブサイトで、比治山スカイウォークを含むみなみ区回遊ルートマップを確認できます。

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