比熱容量

比熱容量：物質が熱を蓄える能力

比熱容量とは、物質1キログラムの温度を1ケルビン（K）上昇させるために必要な熱量のことです。簡単に言うと、物質が熱を蓄える能力を示す指標です。単位はJ/(kg・K)（ジュール毎キログラム毎ケルビン）が用いられ、水の比熱容量は18℃において約4184 J/(kg・K)と、非常に高い値を示します。これは、水が高い熱容量を持つため、温度変化が緩やかであることを意味します。

計量単位とSI単位系

比[熱容量]]の計量単位は、SI文書ではジュール毎キログラム毎ケルビン（J K⁻¹ kg⁻¹）、計量法ではジュール毎キログラム毎ケルビン（J/(kg・K)）またはジュール毎キログラム毎度（J/(kg・℃)）と規定されています。これらの単位は、物理的には同一です。一方、グラム単位を用いたJ/(g・K)は非法定単位であり、取引・証明には使用できません。また、カロリー]を用いた表現もかつては用いられていましたが、[[SI単位ではないため、1999年10月以降は取引・証明への使用が禁止されています。

熱力学における比熱：定圧比熱と定積比熱

熱力学では、1モルの物質の熱容量であるモル熱容量（単位：J mol⁻¹ K⁻¹）も頻繁に使用されます。これは、比熱容量にモル質量を掛け合わせることで算出できます。

比熱容量には、圧力一定下で測定する定圧比熱（記号：cp）と、体積一定下で測定する定積比熱（記号：cV）の2種類があります。

定圧比熱 (cp): 圧力が一定に保たれた状態での単位量あたりの物質を単位温度変化させるのに必要な熱量です。定圧モル比熱、あるいは定圧モル熱容量とも呼ばれます。数学的には、エンタルピー(h)の変化量の温度(T)に対する偏微分係数で表されます。 cp = (∂h/∂T)p

定積比熱 (cV): [体積]]が一定に保たれた状態での単位量あたりの物質を単位温度変化させるのに必要な熱量です。定積モル比熱、あるいは定積モル熱容量とも呼ばれます。数学的には、[[内部エネルギー]の変化量の温度(T)に対する偏微分係数で表されます。cV = (∂u/∂T)V

比熱容量の性質と理想気体

一般的に、液体や固体の比熱容量は温度による変化は少ないです。しかし、気体ではエンタルピーの変化や体積変化が大きく、状態量として定圧比熱や定積比熱を区別する必要があります。

理想気体の場合、定圧比熱と定積比熱の間には、気体定数Rを用いたマイヤーの関係式 (cp - cV = R) が成立します。これは、定圧条件下では体積変化による仕事をする必要があり、そのため定積条件下よりも多くの熱量が必要となるためです。固体や液体では、熱膨張が正にも負にもなりうるため、cpとcVの大小関係は一定ではありません。気体の混合物では、一般的にモル分圧比が成立します。また、ある温度以上の単体固体では、定積モル熱容量cVが一定になるというデュロン＝プティの法則も知られています。金属中の自由電子系の比熱（電子比熱）は低温では絶対温度に比例します。

容積比熱

質量単位ではなく、体積単位で熱容量を考える場合、容積比熱または体積比熱が用いられます。単位は例えばJ/(m³・K)です。建築分野（壁材の断熱特性）や土壌分野（土の熱特性）などで利用されています。

まとめ

比熱容量は、物質の熱的性質を理解する上で重要な概念であり、熱力学、材料科学、気象学など、幅広い分野で応用されています。定圧比熱と定積比熱、そしてそれらの関係性を理解することで、物質の熱挙動をより深く理解することができます。

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