比類なきジーヴス

『比類なきジーヴス』解説：ユーモアと機知に富んだP・G・ウッドハウスの傑作

『比類なきジーヴス』（原題：The Inimitable Jeeves）は、イギリスのユーモア作家P・G・ウッドハウスによる短編小説集であり、ジーヴスシリーズの2作目として知られています。1923年にイギリスとアメリカで出版され、11編の短編を時系列順に構成した作品で、長編として扱われることもあります。

日本では、2005年に国書刊行会から完訳版『比類なきジーヴス』が、2011年には文藝春秋から『ジーヴズの事件簿』が刊行されました。『ジーヴズの事件簿』には、シリーズ第1弾の短編や、主人公バーティーとジーヴスの出会いを描いた作品などが追加収録されています。

2018年には、上皇后美智子が愛読書として本作に言及したことがきっかけで、大きな話題を呼びました。

収録作品

ジーヴス、小脳を稼働させる / ビンゴが為にウエディングベルは鳴らず
アガサ伯母、胸のうちを語る / 真珠の涙
ウースター一族の誇り傷つく / 英雄の報酬
クロードとユースタス登場 / サー・ロデリック昼食に招待される
紹介状 / お洒落なエレベーター・ボーイ
同志ビンゴ / ビンゴ、グッドウッドでしくじる
説教大ハンデ
スポーツマン精神
都会的タッチ
クロードとユースタスの遅ればせの退場
ビンゴと細君 / 大団円

主な登場人物

バーティー・ウースター: 裕福な青年で、ジーヴスに助けられながら様々な騒動に巻き込まれます。善良で友人を大切にする性格ですが、思慮が浅い一面も。
ジーヴス: バーティーに仕える天才的な従者。博識で冷静沈着、バーティーやその周囲の人々を的確な助言で導きます。保守的な一面もあり、バーティーの奇抜なファッションには否定的です。
ビンゴ・リトル: バーティーの幼なじみで、恋多き青年。春になると誰かに恋をするという惚れっぽい性格で、その恋沙汰が騒動を巻き起こします。
モティマー・リトル（ビトルシャム卿）: ビンゴの伯父で、「脚すっきりしなやかリトルの湿布薬」で財を成した富豪。ビンゴの恋路に様々な影響を与えます。
アガサ・グレッグソン: バーティーの伯母で、彼を厳しく叱責する存在。バーティーにとって頭の上がらない人物です。
ロージー・M・バンクス: 人気ロマンス作家。作中で重要な役割を果たします。

あらすじ

物語は、バーティーの日常を中心に展開されます。恋多き友人ビンゴの騒動、アガサ伯母からの結婚の圧力、双子の従兄弟クロードとユースタスの悪ふざけなど、次々と巻き起こる騒動に、バーティーはジーヴスの知恵を借りながら立ち向かいます。それぞれの短編は独立した物語として楽しめますが、全体を通して読むことで、より深く作品の世界観を堪能できます。

各短編の簡単なあらすじ

ジーヴス、小脳を稼働させる / ビンゴが為にウエディングベルは鳴らず: ビンゴが喫茶店の給仕メイベルに恋をするが、伯父が結婚に反対しそうだと悩む。ジーヴスはロージー・M・バンクスの小説を読み聞かせ、警戒を解く作戦を立てる。
アガサ伯母、胸のうちを語る / 真珠の涙: アガサ伯母から結婚相手を紹介されるが、相手の弟がカジノで借金をして困っていると知り、金を貸すことになる。
ウースター一族の誇り傷つく / 英雄の報酬: 再びアガサ伯母から縁談を持ち込まれる。相手は知性溢れる女性オノリア・グロソップ。バーティーは、オノリアに恋をしている親友ビンゴとくっつけようと画策する。
クロードとユースタス登場 / サー・ロデリック昼食に招待される: オノリアとの婚約を解消するため、バーティーは精神科医の父親、サー・ロデリックとの会食に臨む。従弟のクロードとユースタスが騒動を起こし、会食は混乱する。
紹介状 / お洒落なエレベーター・ボーイ: アガサ伯母の紹介状を持った青年がアメリカにやってくる。バーティーは、その青年を劇場関係者に紹介してしまう。
同志ビンゴ / ビンゴ、グッドウッドでしくじる: ビンゴが貴族社会に批判的な女性に恋をする。グッドウッド・カップでビンゴが一攫千金を狙うが、失敗に終わる。
説教大ハンデ: ビンゴが家庭教師をしながら、また別の女性に恋をする。バーティーは、どの牧師の説教が一番長いか賭けるゲームに参加する。
スポーツマン精神: トウィングの祭りで様々なスポーツに賭けることになるバーティーたち。狡猾な少年ステッグルスが妨害工作を仕掛けてくる。
都会的タッチ: ビンゴが牧師の姪っ子に恋をする。ジーヴスは、ステッグルスがバージェス嬢の結婚の行方を賭けの対象にしていることを知る。
クロードとユースタスの遅ればせの退場: オックスフォードを放校処分になったクロードとユースタスは、ヨハネスブルグの会社に勤めることになる。出発前日、バーティーのフラットに預けられる。
ビンゴと細君 / 大団円: ドローンズクラブがすす払いのため、シニア・リベラル・クラブに繰り出す。ビンゴは、そこで出会ったウェイトレスに恋をする。

まとめ

『比類なきジーヴス』は、P・G・ウッドハウスならではのユーモアと機知に富んだ会話、個性的なキャラクターたちが織りなす、抱腹絶倒の物語です。ジーヴスの鮮やかな解決策と、バーティーの愛すべきキャラクターが、読者を魅了し続けています。

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