毛利祥久

毛利祥久：華族、銀行家、そして三河干拓事業の挑戦

毛利祥久（1860-1941）は、長州藩の有力家系である右田毛利家の13代当主を務めた人物です。男爵の称号を持ち、銀行家としても成功を収めましたが、その生涯は栄光と挫折が複雑に絡み合ったものでした。

華族としての出自と銀行家としてのキャリア

毛利祥久は、右田毛利家11代当主毛利元亮の次男として生まれました。12代当主毛利親信を養父として迎え、家督を継承。養父が頭取を務めていた第百十国立銀行（後の山口銀行）の取締役にも就任し、銀行界でも重要な役割を果たしました。ただし、彼自身が頭取であったとする情報もありますが、公式な記録では取締役とされています。

三河干拓事業：挑戦と挫折

祥久の生涯における大きな出来事の一つが、愛知県の三河干拓事業への関与です。明治20年（1887年）、彼は山口銀行の役員として、この大規模な干拓事業に乗り出しました。愛知県庁からの強力な支援を得て、新田の造成と用水路の建設を進めます。しかし、事業は難航を極めます。度重なる自然災害に見舞われ、特に明治24年（1891年）の濃尾地震と翌年の暴風雨によって堤防が決壊、甚大な被害をもたらしました。多くの犠牲者が出る事態となり、事業は最終的に断念せざるを得なくなります。

巨額の損失を出し、明治銀行史には「明治25年、第百十国立銀行三河干拓事業の蹉跌により巨額の損失を生ず」と記されています。祥久は、事業に関連する全ての権利を神野金之助に譲渡しました。神野金之助は、毛利祥久の設計を改良し、工事を完成させました。

晩年と家族

三河干拓事業の失敗後も、祥久は男爵の地位を維持し、日露戦争時には多額の軍費を献納し、金盃を下賜されるなど、華族としての地位を保ちました。晩年は悠々自適な生活を送り、園芸をたしなむなど穏やかな日々を送ったとされています。1941年、82歳で生涯を閉じました。

祥久の家族構成も注目に値します。妻ユリとの間に数人の男子と女子をもうけました。その子供たちは、それぞれ有力な家系との縁戚関係を築いており、祥久の社会的繋がりを反映しています。

まとめ

毛利祥久は、華族としての地位、銀行家としての成功、そして大規模な干拓事業への挑戦という波瀾万丈の生涯を送りました。三河干拓事業の失敗は大きな挫折ではありましたが、彼の生涯は、時代の変遷の中で、一人の貴族がどのように生き、どのように事業に関わったのかを示す貴重な事例となっています。彼の功績と失敗は、日本の近代化の歴史を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

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