右田毛利家

右田毛利家：長州藩を支えた名家の歴史

右田毛利家は、戦国時代の雄・毛利元就を祖とする毛利家の庶流です。江戸時代を通じて長州藩の一門家老を務め、明治維新後には華族に列せられました。その歴史は、武勇のみならず学問への造詣も深く、日本の近代化にも貢献した一族の姿を映し出しています。

周防右田を拠点に

右田毛利家の始まりは、毛利元就の七男、毛利元政（天野元政）に遡ります。関ヶ原の戦い後、元政は周防国三丘に1万石を与えられましたが、その後、家老であった宍戸家と領地を交換。寛永2年（1625年）、周防国右田（現在の山口県防府市）に移封され、1万7000石を領有しました。この地を拠点として、以降は「右田毛利」と呼ばれ、長州藩の一門家老として藩政に貢献していきます。家格は一門家老の中でも宍戸家に次ぐ高位にありました。

右田毛利家の居館は、現在の山口県防府市上右田地域にありました。建物自体は現存しませんが、山口県道24号防府徳地線沿いには「右田毛利邸前」というバス停が残っており、その名残を感じることができます。また、清和源氏を祖とする家系であることから、右田ヶ岳の山麓にあった総受寺を天徳寺と改め、菩提寺としていました。

学問奨励と幕末維新

2代当主の毛利元倶は、寛永5年（1628年）、郷校時観園を設立。家臣の子弟の教育に力を入れるなど、学問の振興にも尽力しました。儒学者である滝鶴台などが教師を務めていたと伝えられています。

幕末維新期には、12代当主の毛利親信が戊辰戦争で功績を挙げ、明治維新後、当初は士族となりました。その後、明治30年（1897年）、13代当主の毛利祥久が父・親信の功績により、華族男爵に叙せられます。祥久は日本鉄道社長などを歴任し、日本の鉄道発展にも大きく貢献しました。

右田毛利家は、その後の代を重ね、子孫は山口県佐波郡右田村（現在の山口県防府市）に邸宅を構え、日本の近代化に貢献した名家の歴史を刻み続けてきました。

系譜と関連事項

右田毛利家の系譜は、初代天野元政から16代毛利祥元まで続き、多くの優れた人物を輩出しました。また、右田毛利家家老の桂忠晴が造ったとされる「月の桂の庭」など、歴史的建造物や庭園も残されています。これらの史跡は、右田毛利家の歴史と文化を後世に伝える貴重な遺産となっています。

右田毛利家の歴史は、単なる武家の歴史にとどまらず、学問の振興や近代日本の発展に貢献した、多角的な側面を持つ一族の物語です。彼らの功績は、日本の歴史における重要な一端を担っていると言えるでしょう。

参考文献

華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年

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