毛嚢炎

毛嚢炎（もうのうえん）

毛嚢炎は、毛穴に発生する細菌感染症であり、一般的には古くから疔（ちょう）と呼ばれていましたが、現代では毛嚢炎という名称が広く使われています。この病気では、1本または複数本の毛の根元が小さな白ニキビのような状態になり、毛穴の下層や皮膚の深部にまで影響を与えることがあります。主に毛穴の周囲にある組織が炎症を起こすため、皮膚の衛生状態や慢性の皮膚疾患がある人は、特に注意が必要です。

発生要因

毛嚢炎の原因となる細菌の多くは、黄色ブドウ球菌であることが一般的です。この細菌は、表皮に生じる小さな傷や刺し傷から侵入する場合もありますが、実際の侵入経路は不明であることが多いのです。また、温水浴槽やジャグジーバスなどの不適切な塩素処理が行われた場合に、緑膿菌が原因となることもあります。こうした場合は、温浴毛包炎または温浴皮膚炎と呼ばれています。

さらに、マラセチア属の「Malassezia globosa」が病原菌となる場合もあり、その場合はマラセチア毛包炎と区別されます。特に免疫機能が低下している人や、糖尿病を患っている人に好発する傾向があり、肥満や高齢などもリスク要因とされています。時には原因不明のまま感染症が繰り返し起こることもあります。

治療方法

毛嚢炎の主な治療法としては、消毒薬が含まれた液体せっけんで皮膚を洗浄し、抗生物質を使用することが挙げられます。外用薬としては、クロラムフェニコールやゲンタマイシン、ジクロキサシリンなどが用いられ、内服薬にはニューキノロン系やペネム系の抗生物質が選ばれます。

また、病変が皮膚の深部にまで達している場合は、外科的に皮膚切開を行い、抗生物質を使用します。ただし、薬剤耐性を持つ菌が原因である場合には、その特性を考慮して使用する薬剤が選択されます。

類似疾患

毛嚢炎と似た症状を示す疾患には、鬚毛部仮性毛包炎があります。これは、髭や体毛の剃り方によって髭が皮膚の中に入ってしまい、内方に成長して炎症を引き起こすものです。この場合は細菌感染を伴わないことが多く、髭や体毛による偽毛包炎とも呼ばれます。

まとめ

毛嚢炎は、皮膚の炎症を引き起こす細菌感染であり、しっかりとした衛生管理や適切な治療が重要です。早期に適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぎ、快適な生活を取り戻すことが可能です。

もう一度検索