民俗資料緊急調査

民俗資料緊急調査について

民俗資料緊急調査とは、1962年から1964年にかけて、文化財保護委員会（現在の文化庁文化財部）が実施した、民俗文化に関する重要な調査です。この調査は、特に集落の解体や移転が予想される場合に、必要な民俗資料を事前に収集することを目的としています。具体的には、全国の各都道府県内から30カ所の調査地が選ばれ、全体で計20項目にわたって予備的な調査が行われました。

調査の経緯と目的

1962年から1964年の期間において、おこなわれた調査には、事前に作成された『民俗資料緊急調査手引』が用いられました。この手引きに基づいて、信頼のおける伝承者、主に地域に根ざした年配の人々を対象に調査が進められました。調査は、各項目について詳細な調査票が用意され、調査員はその結果に基づいて、資料の緊急性を(A)緊急に収集・保存すべき、(B)できるだけ早く収集・保存すべき、(C)特に保護を要しない、という3つのカテゴリーに分類しました。

この調査の成果は、各都道府県において整理され、さらに文化庁によってまとめられました。その結果は『日本民俗地図』として全4冊に分冊されて刊行されることとなり、後にはさらに詳細な年中行事や社会生活に関する資料が含まれるようになりました。

調査の継続と進展

1965年以降、民俗資料の継続的な調査は、文化財保護委員会が各都道府県の教育委員会に対して指導を行い、国庫からの補助金を付与する形で実施されています。これにより、地方や集落における民俗文化の保全が体系的に進められています。

さらなる緊急調査が必要とされる理由としては、ダム建設による集落の水没、干拓や都市開発、過疎地域への支援策が挙げられます。これらの事例では、民俗資料が失われる危険が高く、迅速な調査・収集が不可欠となります。

民具調査の重要性と方法

民俗資料を調査する際には、数名で構成されるチームによる共同作業が非常に重要です。チームメンバーは、調査のさまざまな面を分担し、例えば民具の計測、記録、写真撮影、そして地域の人々からの聞き取りを行います。こうした協力によって、より正確で詳細な資料を収集することができるのです。

長期間にわたって民俗資料として保存されるべきものについては、名称や製作・用途、さらには地域や伝承に関する詳細な記録が不可欠です。これにより、その資料が過去の単なる道具や骨董ではなく、科学的調査に基づく重要な文献として位置付けられるのです。

2004年には文化財保護法が改正され、生活や生産に使われる道具や技術も文化財として保護されることとなりました。これにより、民俗文化の多様性とその保護の必要性が一層重要視されることとなりました。

結論

民俗資料緊急調査は、地域文化の保存と継承において非常に重要な役割を果たしてきました。今後もこのような調査を通じて、貴重な民俗資料が適切に収集・保存されることが求められています。

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