民衆を導く自由の女神

民衆を導く自由の女神

ウジェーヌ・ドラクロワが1830年に描いた『民衆を導く自由の女神』（フランス語原題: La Liberté guidant le peuple）は、フランス7月革命の象徴的な作品です。この絵画は、力強く胸を張る女性が左手に銃剣付きのマスケット銃を持ちながら、右手でフランス国旗を掲げ、民衆を先導する姿を描写しています。この女性は、フランスの象徴であるマリアンヌの代表的な表現の一例とされています。

ドラクロワはこの作品を通じて、自由という理念を視覚的にアレゴリーで表現しています。作品は、自由を象徴する女性が母性を象徴する乳房を持つことで、祖国への思いを表現しています。また、彼女が被っているフリギア帽は、フランス革命の時代に自由の象徴として用いられるようになりました。さらに、女性の横にはシルクハットをかぶった男性が立っており、これがドラクロワ自身であるとされることが多いです。彼女の右側にいる二丁拳銃を持つ子供については、誰を象徴しているのか明確ではありません。

この作品は1831年5月にサロン・ド・[[パリ]]に出品され、フランス政府によって3,000フランで購入されました。しかし、その後すぐにあまりにも政治的で扇動的な作品であるとの理由から、1848年の革命まで恒常的な展示は行われませんでした。1874年からはルーヴル美術館に収蔵され、今に至るまで多くの人々に親しまれています。

また、2013年2月には来館者によって黒のフェルトペンで落書きされる事態が起きましたが、翌日には修復されました。幸いにも、絵の表面にはワニスが施されていたため、絵の具には浸透しておらず、修復作業が可能でした。この落書きは「AE911」と書かれており、アメリカ同時多発テロ事件やその陰謀論と関連している可能性があります。落書きをした女性は、精神的な問題を抱えたため、裁判を受ける前日には精神科の施設に収容されていました。

日本との関わり

1999年、フランスの文化財海外交流展「日本におけるフランス年」の一環として、この絵画がルーヴルから東京国立博物館に貸し出されました。この際、日本からフランスにお貸し出しされたのは法隆寺の百済観音像でした。日本では「日本におけるフランス年」を記念して、この絵画の記念切手も発行されました。フランスでは、ドラクロワの肖像と共に、旧100フラン紙幣にその一部が含まれていました。また、日本への輸送には大型貨物機のエアバス ベルーガが使用されています。

この絵画は日本では一般的に『民衆を導く自由の女神』と呼ばれていますが、原題のLa Liberté guidant le peupleは正確には「民衆を導く自由」という意味合いを持っています。したがって、この絵画を『民衆を導く自由』と紹介する文献も見受けられます。

大衆文化への影響

『レ・ミゼラブル』のキャラクターであるガヴローシュは、女神の右前にいる少年からインスパイアを受けて創作されたとされています。また、イギリスの人気グループコールドプレイのアルバム『美しき生命』（原題：Viva la Vida or Death and All His Friends）のCDジャケットにも使用されています。
日本のバンドであるDragon Ashのアルバム『Viva La Revolution』でも、この作品を模した絵がジャケットに採用されています。さらに、2014年に放送された「ピーチ・ジョン」のCMには、女神の姿が取り入れられており、ローラが絵画の中に吸い込まれる演出がなされています。


このように、『民衆を導く自由の女神』は、アートの枠を超えて、様々な文化やメディアに影響を与え続けています。

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